前回は、ろう付けの定義や特徴について述べました。今回は、接合部の品質を左右する溶融ろう材と母材間の現象・ぬれと、ぬれを算出できるヤングの式、ろう材の種類・形態などを解説します。ぬれの原理、各ろう材の特徴、母材との相性を学び、堅牢なろう付けを確実に行えるようになりましょう。
第2回「ろう材の種類とぬれ」を解説していきます。
1. ぬれとヤングの式
ろう材とは、ろう付けでのりの役割を担う合金です。加熱により溶融金属となったろう材は、設置された母材の隙間へ浸透し、継手を形成する役割を果たします。この時、母材を傷つけないために、ろう材の融点(液相線温度)は、母材の融点(固相線温度)より低い必要があります。また、溶融ろう材は、母材に対してよくぬれる必要があります。ぬれとは、溶融ろう材の表面張力と、母材の表面張力、溶融ろう材と母材の間に発生する界面張力の3つの力の関係によって、決定する物理現象です(図1)
図1を解説します。γLV溶融ろう材の表面張力、γSVは母材の表面張力、γSLは溶融ろう材と母材間の界面張力をそれぞれ表しています。これら3つの張力は、物質特有の値であるとともに、温度依存性を示す物性値です。溶融ろう材(液体)を母材・被接合材(固体)上へ滴下すると、直後は図1左のように液滴となります。時間経過に伴い、ぬれに関するヤングの式が成立するまで、すなわち3つの張力が釣り合うまで、母材上の溶融ろう材は広がり、やがて止まります(図1右)。この現象を、ぬれと称します。母材の表面張力が大きいほど、また溶融ろう材の表面張力が小さいほど、ぬれが生じやすいといえます。また、張力は温度の関数です。従って、ろう材と母材の組み合わせと、ろう付け温度によって、ぬれの状態は変動します。
母材とろう材が決定した段階で、両物質の表面張力(γLV、γSV)は決定します。そのため、両物質間の界面張力(γSL)が、ぬれの状態を左右する重要な値となります。母材表面の酸化皮膜、汚れなどは、ぬれの阻害因子となります。また、母材表面のミクロ的な形状(粗さ)も、ぬれに強く影響を及ぼします。
さらに溶融ろう材と母材間で界面反応が生じると、初期界面は移動します。界面反応とは、界面を挟んだ両物質間で行われる、原子のやり取りのことです。界面反応によって、界面近くの母材とろう材の組成は変化します。この変化が、継手の性質に影響を及ぼす場合があるので、十分に注意しましょう。
2. ろう材の種類と用途
世の中の工業製品を構成する金属材料や使用環境は、多種多様です。個々の金属材料に応じたろう材を、選択・製造する必要があります。しかし金属材料の種類は膨大に存在し、それぞれにろう材を選定することは現実的ではありません。実際には、7種類のろう材がJISで規格化され、主に使用されています(表1)。
この7種類のろう材は、代表例です。実際には、これら以外のろう材も開発され、利用されています。また、ろう材は隙間を充填し、継手の一部となります。使用環境によっては、十分な機械的性質や高耐食性が要求されます。また継手の一部となるため、装飾品などでは母材と色調を合わせる必要もあります。
3. ろう材の形態
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ろう付けとは
- 第2回 ろう材の種類とぬれ
- 第3回 ろう付けと冶金
- 第4回 フラックスと雰囲気の役割
- 第5回 加熱源の種類
- 第6回 ろう付けの継手設計
- 第7回 ろう付けの方法とろう付け部の欠陥