前回は、バイオエタノールを解説しました。今回は、バイオディーゼル燃料について説明します。車両燃料として、ガソリンと並んでディーゼル燃料が使われています。石油系燃料の代替として、バイオマス由来のバイオディーゼル燃料が、多くの国で導入されています。日本では、廃食品油を主な原料としてバイオディーゼル燃料が生産されています。廃食品油をアルカリ法という方法で処理して、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester 以下バイオディーゼル燃料と略)に変換して最終製品としています。バイオディーゼル燃料導入の経緯、製造法、これからの課題などについて紹介します。
第5回「バイオディーゼル燃料」を解説していきます。
1. バイオディーゼル燃料導入の経緯と実態
植物油や廃食品油などを原料として生産される、軽油の代替となる燃料をバイオディーゼル燃料と称しています。植物油には菜種油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、パーム油などがあります。
ディーゼルエンジンは、約100年前にパリで開催された万国博覧会で、ドイツの技術者であるルドルフ・ディーゼルによって紹介されました。この時は燃料としてピーナツ油が使われました。植物油を直接ディーゼルエンジンで使用すると、燃焼室内に未燃カーボンが蓄積してエンジンに不具合が生じます。このため、温度を上げたり、石油系のディーゼルオイルに混合するなどして使用します。現在は、メタノールとエステル交換反応を行って、ディーゼル油程度に粘度を低下して使うことがほとんどです。
世界全体では2016年で約3000万klが生産されています。原料には地域性があり、欧州では菜種油とヒマワリ油、アメリカでは大豆油、東南アジアではヤシ油が使われています。全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会によれば、日本の2017年度のバイオディーゼル燃料の生産量は約1.4万klとなります。国内最大規模のプラントは京都市のプラントです。京都市では、京都市南部クリーンセンター構内に設立された京都市廃食用油燃料化施設において、2004年6月よりバイオディーゼル燃料を生産しています。2018年は日量で約5kl、年間で約1000klが生産されています。
京都市では、2018年4月現在、バイオディーゼル燃料が100%(B100)の燃料は、101台のゴミ収集車に使用されています。また、バイオディーゼル燃料を5%含むB5はゴミ収集車47台とバス108台の燃料として使われています。二酸化炭素の削減量は年間で2100トンに相当します。
一般公道を走行する車両にバイオディーゼル燃料を使用すれば、軽油引取税が課税されることになります。バイオディーゼル燃料を軽油と混合して販売したり、自動車の使用者が自らバイオディーゼル燃料を購入したり、製造して軽油と混合して使用する場合は、軽油引取税の課税対象となります。軽油引取税は地方税であり、各都道府県の税事務所での判断によって課税基準が決められます。
日本ではこれまで、バイオディーゼル燃料についての規格が存在していませんでしたが、総合資源エネルギー調査会により、欧州規格を参考にして規格化が検討されました。この検討を受けて2007年に省令が公布され、バイオディーゼル混合燃料油の一般のディーゼル車への流通を念頭に、2007年3月に「揮発油等の品質の確保等に関する法律」の軽油の強制規格が改正されました。
この改正内容は、軽油へのバイオディーゼル燃料の混合率が5%以下とされ、3価の脂肪酸にグリセリンが結合したトリグリセリドの含有率、メタノール含有量などが追加されたものです。なお、この法律ではあくまで炭化水素油を対象とした規制であるため、混合率が5%を超えるバイオ混合軽油や炭化水素成分を含まないB100は、この法律の規制の対象とはなりません。これらを自動車用燃料として使用する場合には、不具合を避けるために、燃料品質、車両構造、点検整備などに留意が必要になります。
2. バイオディーゼル燃料の製造法
現在使用されているバイオディーゼル燃料のほとんどは、図1に示すようにアルカリ法といわれる方式で製造されています。すなわち、植物油を水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを触媒としてメタノールと反応させます。反応終了後は、層分離が生じ、上層にエステルが浮上するとともに、下層にはグリセリンが沈降します。エステル層にはアルカリ触媒やグリセリンが残存しているので、これを除去するために温水で数回洗浄します。その後、加熱して水分を蒸発させることで、精製されたバイオディーゼル燃料を得ることができます。この反応はトランスエステル化反応であり、グリセリンが副生します。反応は大気圧下温度約60℃で進行し、反応時間は1時間程度です。
図2は植物油のトランスエステル化反応式と模式図です。R1、R2、R3は脂肪族炭化水素を示し、炭素数は11から17程度です。すなわち、脂肪酸に3モルのメタノールをアルカリ触媒下で反応させると、バイオディーゼル燃料が生成します。
反応の際に副産物として原料の約10%のグリセリンができます。グリセリンは精製すれば、香粧品や医薬品の原料として商品価値を有しています。しかし、国内ではグリセリンは供給過剰気味であるために、廃棄物としてメタン発酵の原料にしたり、そのままボイラー燃料として利用したりしているケースもあります。
このアルカリ法の他にも、研究開発中の技術として、酸触媒法、超臨界法、バイオ触媒法、固体触媒法などが提案されています。これらはいずれも反応物としてメタノールが必要です。現状のバイオディーゼル燃料は含酸素物質なので、貯蔵タンクが腐食したり、重合物が生成してフィルタ詰まりを引き起こしたりする傾向があります。このため抗酸化剤を添加して、酸化安定性を向上させる必要があります。将来はエンジンとの整合性の点からも、含酸素系から炭化水素系に移行するものと予想されます。
3. 今後の課題
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 バイオマスの基礎
- 第2回 木質バイオマス発電
- 第3回 バイオガス発電
- 第4回 バイオエタノール
- 第5回 バイオディーゼル燃料
- 第6回 藻類バイオ燃料