バイオエタノール|バイオマスの基礎知識4

バイオマスの基礎知識
著者:公立鳥取環境大学 環境学部 特任教授 横山 伸也

世界では、車両用燃料に用いるガソリンやディーゼル燃料の代替として、バイオエタノールやバイオディーゼルが使われています。日本でも地球温暖化対策の一環として、ガソリンにエタノールを3%混入したE3を導入しています。ただし、後述するようにETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)に変換して混合しています。日本のバイオエタノール導入の経緯、バイオエタノールの製造法、次世代バイオエタノール製造の研究開発状況などについて解説します。

第4回「バイオエタノール」を解説していきます。

基礎知識DL

1. バイオエタノール導入の経緯と実態

2018年時点で、世界ではバイオエタノールが車両用燃料として約1億kl 生産されています。アメリカはトウモロコシを原料として約5,100万kl、ブラジルはサトウキビから2,400万kl を生産しています。エタノールはガソリンとの相溶性が良く、どのような割合でも混合できます。バイオエタノールはガソリンに比べて、発熱量は低いけれどもオクタン価が高いので、オクタン価向上剤としての役割もしています。バイオエタノールをガソリンに代替することにより、温室効果ガスの排出削減、エネルギー資源の多様化、化石燃料の削減などの効果があります。

日本では、2009年にエネルギー供給構造高度化法が施行されました。これにより、2011年から2017年までに、エタノールを原油換算で50万kl(エタノール換算で約83万kl)導入することになりました。図1に示すように、2011年から2017年までは、バイオエタノールの導入量を徐々に増加して、年間で83万klの導入を達成してきました。

バイオエタノールの導入実績と予想
図1:バイオエタノールの導入実績と予想

E3としてエタノールを直接混合すると、蒸気圧がガソリン単独時に比べて上昇するので、その対策としてETBEに変換して混合することになりました。ETBEは図2に示すように、石油由来のイソブテンとエタノールから作ります。ガソリンにETBEを7%加えると、ちょうどエタノール3%分、すなわちE3に相当します。

ETBE生成の化学式
図2:ETBE生成の化学式

2018年に告示改訂が行われ、導入量はこれまでと同じですが、バイオエタノール以外の国産の液体燃料の導入も視野に入れることとなりました。さらに、持続可能性の観点から、対ガソリン比で温室効果ガスの削減率が、50%から55%に引き上げられました。温室効果ガス排出の算定に当たっては、LCA(ライフサイクルアセスメント)的な観点から、作物を植える土地利用変化に伴う温室効果ガス排出量、植え付け、施肥、輸送、変換などの各段階まで考慮に入れています。

2017年までは、この削減率50%を満足するのはブラジル産バイオエタノールのみで、専らブラジル産が使われていました。告示改訂により、加重平均で削減率55%が満足されていれば、ブラジル産以外のものでも受け入れ可能になりました。ちなみにブラジル産は削減率60%でEPR(エネルギー産出/ 化石エネルギー投入比)が8、アメリカ産は削減率が48%でEPRは1.3です。この結果、アメリカ産のバイオエタノールが約44%導入されることになり、2019年7月に初めてアメリカ産エタノールを含むETBEが日本に陸揚げされました。

このような対応で、バイオエタノールの供給先を多様化することにより、安定供給に少なからず貢献することになりました。ETBEの原料であるエタノールはバイオマス由来で、イソブテンは石油由来の物質です。しかし、最近イソブテンが発酵法で製造できると報告され注目されています。仮にETBEが全てバイオ由来であれば、二酸化炭素削減効果が著しく改善されることになります。

2. バイオエタノールの製造方法

トウモロコシ、サトウキビ、米、麦、キャッサバなどはバイオエタノールの原料です。これらはいずれも食料であることから、燃料生産には批判があります。これに対し、木材、バガス(サトウキビの搾りかす)、稲ワラのような、非食料系バイオマスを原料としたバイオエタノール生産の研究開発が各国で行われています。図3に示すように、食料を原料とするバイオエタノールを第一世代バイオエタノール、非食料由来のバイオエタノールを第二世代バイオエタノールと称しています。

バイオマスからのエタノール生産システム
図3:バイオマスからのエタノール生産システム

第一世代バイオエタノールは、原料がサトウキビのような糖であれば、酵母により発酵すればエタノールが得られます。トウモロコシの場合は原料がデンプンなので、これを酵素によりグルコースに糖化します。この糖化反応は比較的容易に進行し、発酵工程へと続きます。ただし、エタノール濃度は高くても15% 程度なので、蒸留により濃度を95% まで濃縮します。これは主としてFFV(Flexible Fuel Vehicle)の燃料に用いられています。

ガソリンと混合する場合には、脱水してさらに水分を少なくした無水エタノールが用いられます。エタノールの水溶液は、共沸現象のために95%以上の濃縮は原理的にできません。99.5%以上の無水エタノールを得るためには、ゼオライトなどによって水を吸着する吸着法、吸収、膜分離法などを採用します。

一方、第二世代バイオエタノールは、バイオマス中のリグニンを除去した後、セルロースとヘミセルロースを糖化してグルコースに変換しなければなりません。昔は、この工程に硫酸や塩酸を用いていました。しかし、現在は酵素を使うのが主流となっています。デンプンが糖化されやすいのに対して、セルロースの糖化は非常に難しく酵素のコストも高くなります。いったん、グルコースになってしまえば、後段のプロセスは第一世代バイオエタノールと全く同じです。現時点で、第二世代バイオエタノールはまだ商業化されておらず、研究開発が進行中です。

第二世代バイオエタノールは将来の技術と見なされていますが、実は1819年に木材に濃硫酸を作用させると糖ができることが報告されています。第二次世界大戦中は、日本も木材からエタノールを生産していました。非常時ゆえに採算性は度外視していたわけです。現在は生産効率、コスト、環境影響などを考慮して、セルロースの糖化には塩酸や硫酸に替わって酵素を用いるのが主流です。

技術的な課題としては、木質バイオマスの中にあるセルロースをいかに効率よくリグニンから分離し、さらにセルロースを効率よく安価な酵素でグルコースに変換するかにかかっています。この糖化技術が可能になれば、バイオエタノール製造にとどまらずに、シュガープラットホームとして、多くのバルクケミカル製造に大きく貢献できます。現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により、ガソリン比で二酸化炭素排出削減効果が50%以上、かつEPRが2以上を目指した一貫プロセスの研究開発が進められています。

3. 今後の課題

続きは資料をダウンロードしてご覧ください!

全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 バイオマスの基礎
  • 第2回 木質バイオマス発電
  • 第3回 バイオガス発電
  • 第4回 バイオエタノール
  • 第5回 バイオディーゼル燃料
  • 第6回 藻類バイオ燃料

基礎知識DL

  • 資料ダウンロード

    これさえ読めば簡単に利用できる
    「3分でわかるイプロス無料出展会員」

  • 無料掲載

    イプロスで製品・サービスをPR
    無料掲載のお申し込みはこちらから