バイオガス発電|バイオマスの基礎知識3

バイオマスの基礎知識
著者:公立鳥取環境大学 環境学部 特任教授 横山 伸也

生ゴミ、食品廃棄物、下水汚泥のような含水率の高いバイオマスは、乾燥した木質バイオマスと異なり、燃焼することはエネルギー的に不利です。このような性質を持つバイオマスは、一般には嫌気性発酵(メタン発酵)によりバイオガスを生産して、これをエネルギーとして使います。メタン発酵、バイオガスを利用したバイオガス発電について解説するとともに、バイオガスから水素を製造する新技術を紹介します。

第3回「バイオガス発電」を解説していきます。

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1. メタン発酵によるバイオガス生成

メタン発酵は図1に示すように、種々の微生物の作用により有機物が段階的に分解され、最終的にバイオガス(主成分がメタンと二酸化炭素)が生成する現象です。嫌気的条件で反応が進行するために、嫌気性消化とも呼ばれます。原料となるのは生ゴミ、食品廃棄物、下水汚泥、家畜排泄物など多種多様な有機物が含まれます。これらの高分子が微生物により分解されて可溶化されます。これにより、炭水化物やセルロースなどの多糖類は単糖、タンパク質はペプチドとアミノ酸、油脂はグリセリンと脂肪酸に低分子化されます。

メタン醗酵のフロー図
図1:メタン醗酵のフロー図

次いで、酸生成細菌によって分解され、酢酸、ギ酸などの低分子有機酸に変換されます。そして、最終段階ではメタン生成菌によりメタンが生成します。メタン発酵により生成したガスをバイオガスと呼びます。一般的には、バイオガスにはメタンが60%~ 65%含まれ、残りが二酸化炭素であり、微量の硫化水素も含まれます。

発酵した後に消化液(発酵液)が残り、これをいかに低コストで処理できるかがポイントです。すなわち、液肥として圃場(ほじょう)に散布できれば処理コストがかかりませんし、化学肥料の代替にもなります。しかし、廃液処理をしなければならない場合は、その処理コストの負担が大きくなります。

メタン発酵は発酵温度により低温、中温(35℃)、高温(55℃)と分類されます。問題点としては、全量を変換できずに廃液やスラッジ(汚泥)が出てしまうことであり、収率を上げるための高温処理、粉砕前処理などが検討されています。生成したバイオガスは、熱利用にも発電にも使えます。また、バイオガス中の二酸化炭素を除去してメタンを濃縮し加圧することで、圧縮天然ガスの代替として車両用燃料にも利用できます。さらに不純物を除去して精製すれば、燃料電池にも利用可能となります。

近年、含水率が低い固形状態のままで発酵を行う、乾式メタン発酵と称するシステムが稼働しています。生ゴミ、古紙、食品廃棄物などの固形の有機性廃棄物を、メタン発酵槽内で発酵させメタンガスを生成します。湿式メタン発酵方式とは、メタン生成が発酵層内に充填された有機物の固形物表面で起こっている点で、異なります。特徴は、メタン発酵後の残渣(ざんさ)がほとんどないことから、消化液の処理の課題が解消されるとともに、処理水の放流がなくなり周辺水域の水質保全に寄与できます。

また、発酵槽内の原料成分濃度を高く設定できるため、湿式では困難であった固形物の投入が可能となります。このため、湿式によるメタンガス生成が困難であった地域においても、バイオマスを効率的に利活用することが可能となります。あわせて、湿式では必要であった発酵槽内の撹拌が不要となり、発酵槽内のメンテナンスが容易となります。乾式法では物質および微生物の移動・拡散が困難なため、局所的な反応が進行して微生物間の連携がうまく機能しなくなる可能性があります。従って、低含水率の中での効率的な発酵制御法の確立が、乾式法の技術開発の大きな課題です。

2. バイオガス発電

2019年時点では、FIT制度で電力が売れることから、バイオガス発電を行うケースも増えています(図2)。発電には、ガスエンジンやガスタービンが利用できますが、一般的には多くの場合、ガスエンジンが採用されています。ガスエンジンの基本的構造は、燃料供給系を除いて通常のガソリンエンジンと同じです。

バイオガスを製造するバイオガスプラント
図2:バイオガスを製造するバイオガスプラント

基本となる熱サイクルはオットーサイクルと呼ばれるものです。規模は数kW から1,000kW級までさまざまなものが使われています。効率はエンジン単体で20%から40%程度です。バイオガスでガスエンジンを稼働する場合には、図3に示すように、バイオガスに含まれる硫化水素を除去した後、ガスエンジンに導入して発電します。

バイオガスによる発電
図3:バイオガスによる発電

バイオガス中には硫化水素が2,000ppm程度含まれており、これが配管やガスエンジンの部品を腐食させます。硫化水素は酸化鉄などにより10ppm以下に低減する必要があります。また、下水汚泥から発生するバイオガスには、シャンプー、リンス、接着剤などに含まれる有機ケイ素化合物(シロキサン類)などの不純物が微量含まれています。

これがエンジン内で酸素と反応して燃焼すると、ケイ素がピストン、シリンダライナーに付着して甚だしい摩耗を引き起こします。さらに、点火プラグに堆積して電極などに不具合を発生させ、エンジンの性能や寿命に悪影響を与えるため、活性炭フィルターなどで除去する必要があります。

メタン発酵によるバイオガス発電による電力はFIT制度により、1kWh当たり39円(税抜き、2019年度時点)で売電できます。経済性の観点から、家畜排泄物の場合は乳牛で、最低300頭程度が必要と考えられています。頭数が少ない場合は、集中化や統合化が必要になります。

3. 今後の課題

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 バイオマスの基礎
  • 第2回 木質バイオマス発電
  • 第3回 バイオガス発電
  • 第4回 バイオエタノール
  • 第5回 バイオディーゼル燃料
  • 第6回 藻類バイオ燃料

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