静定トラスの応力計算|建築構造力学の基礎知識6

建築構造力学の基礎知識

著者:近畿大学 工学部 建築学科 教授 大田 和彦

前回は、静定梁(はり)の応力計算例を紹介しました。今回は、静定トラスの解析方法を説明します。トラスは、主にピン節点で部材(要素)を組み立てた安定構造物です。静定トラスの解析方法にはさまざまな手法があり、本稿では、代表的なリッターの切断法と、節点法を取り上げます。リッターの切断法は、モーメントの釣り合い式を立てて解く手法です。節点法には、数式解法と図式解法があり、本稿では図式解法を説明します。図式解法は、示力図が閉じるように解いていく手法です。

第6回「静定トラスの応力計算」を解説していきます。

基礎知識DL

1. リッターの切断法

切断法は、静定トラスの任意の部材を直接解くときに有効な方法です。切断法では、静定梁と同様に、要素を切断して2つの構造体に分解します。切断法には、カルマン法とリッター法があります。カルマン法は3つの釣り合い条件式を用いて未知軸方向力を求めます。一方、リッター法は、同一直線上にない3つの節点に関するモーメントの釣り合い式から未知軸方向力を求めます。ここではよく用いられているリッター法を解説します。

リッター法による解法手順は、以下のとおりです。

1:反力を求める
2:要素を切断して2つの構造体に分解する
3:分解した構造体の切断点に未知軸方向力を書き込む
4:モーメントの釣り合いから未知軸方向力を求める
5:応力値を記述する

図1の例題を通して、詳しく説明しましょう。

1:反力を求める
最初に反力を求めます。反力を求めると、図1に示すとおりになります。

静定トラスの例題
図1:静定トラスの例題

2:要素を切断して2つの構造体に分解する
次に、求めたい部材を含む要素を切断します。ただし、切断できる要素数は3以下です。この例題の場合、切断線Iの3つの軸方向力を求めます。

3:分解した構造体の切断点に未知軸方向力を書き込む
図2に示すように、分解した構造体の切断点に未知軸方向力を書き込みます。未知軸方向力は節点から離れる向きに書きます。

構造体の分解と未知軸方向力の仮定
図2:構造体の分解と未知軸方向力の仮定

4:モーメントの釣り合いから未知軸方向力を求める
未知軸方向力を求めます。例えば、N 1 を求めたいときは、N 1 以外の2つの軸方向力の作用線の交点Aに関して、モーメントの釣り合い式を立てます(図3)。この点を取ると、残りの2つの軸方向力を考慮する必要はないので、直接N 1 を求めることができます。

未知軸方向力N1の解法
図3:未知軸方向力N 1 の解法

N 2 も同様です。残りの2つの軸方向力の作用線の交点Bに関するモーメントの釣り合い式から求めることができます(図4)。

未知軸方向力N2の解法
図4:未知軸方向力N 2 の解法

最後にN 3 を求めたいとき、残りの2つの軸方向力の作用線は平行線なので、交点が求まりません。この場合は、A点やB点に近い点Cを決めて、その点に関するモーメントの釣り合い式を立てて解きます(図5)。このとき軸方向力は2つあり、そのうち1つは先に求めておきます。

未知軸方向力N3の解法
図5:未知軸方向力N 3 の解法

5:応力値を記述する
最後に、表1に示すように、軸方向力を解答欄に記述します。このとき、引張材か圧縮材かを明記します。応力値が正値であれば引張材です。逆に負値であれば圧縮材です。

軸方向力の解答を書く
表1:軸方向力の解答を書く

2. 示力図と連力図

示力図とは、複数の力をつなぎ、力の始点と終点を結んで合力を示した図で、連力図とは、示力図をもとに分力や合力の作用点を得るために作成する図です。

力の釣り合い条件は、以下の2つです。
(1)全ての力の総和がゼロであること
(2)任意点に関する全ての力のモーメントの総和がゼロであること
図式解法では、(1)の条件は示力図が閉じることです。

・示力図
示力図は図6に示すように、次の力P 2 を平行移動させて、最初の力P 1 の終点と次の力の始点とを結びつけます。これを繰り返して全ての力に対して行います。そして、最後の力の終点と最初の力の始点とを結び、最初の力の始点側に矢印を付けます。これを、示力図が閉じるといいます。また、最後の力のことを釣り合い力といいます。

示力図と釣り合い力
図6:示力図と釣り合い力

示力図を描くとき、力の始点同士や終点同士を結びつけてはいけません。もう1つの条件(2)の任意点に関する全ての力のモーメントの総和がゼロであることというのは、力の作用線がある1点で交わることです。それは、連力図を描くことでこの条件を満たします。

・連力図
連力図について説明します。図7の左側は元の問題、右側が示力図を表します。最初に、元の問題の近くに右側に示すような示力図を描きます。次に示力図の近くに極点を取り、極点と示力図の全ての力の始点と終点とを結びます。この線を極線といい、最初の力の始点から順番に名前を付けます。

元の問題の隣に示力図を描く
図7:元の問題の隣に示力図を描く

極点は、力とその力の始点と終点とを結ぶ2つの極線によって三角形を描くように取ります。なぜならば、図9 ~ 12に示すように、極線に力の矢印を付ければこれらの力の三角形は示力図が閉じているからです。

さて、条件(2)の任意点に関する全ての力のモーメントの総和がゼロであることを満たすためには、力の作用線とその力の始点と終点とを結ぶ2つの極線が、ある一点で交わる必要があります。そこで、元の問題の上に連力図を描きます。図8の左側に示すように、最初の力P 1 の作用線上に任意点をとり、その点を通るように2つの極線aとbの平行線を引きます。この平行線を連力線といい、これによって条件(2)が満たされます。

元の問題に連力線abを描く
図8:元の問題に連力線abを描く

次に、図9の左側に示すように、次の力P 2 の作用線と連力線bとの交点を求めます。図9の示力図のように、力P 2 は極線bとcによって力の三角形を構成しているため、極線cと平行な連力線cを力P 2 の作用線と連力線bとの交点を通るように描きます(図9の元の問題)。

次に連力線cを描く
図9:次に連力線cを描く

この作業を、全ての力に対して順次行います(図10)。

続けて連力線dを描く
図10:続けて連力線dを描く

最後に、図11の右側に示すように、釣り合い力とその2つの極線も力の三角形を描いて条件(1)の全ての力の総和がゼロであることを満たせるので、釣り合い力の作用線は、その2つの連力線との交点を通らなければなりません。この問題では、図11の左側に示すように、連力線aとdの交点を通るように釣り合い力を描くことになります。

最後に釣り合い力Rを描く
図11:最後に釣り合い力Rを描く

3. 節点法(図式解法)

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 力とは
  • 第2回 建築構造物のモデル化
  • 第3回 単純梁と片持ち梁の反力計算
  • 第4回 応力とは
  • 第5回 静定梁の応力計算
  • 第6回 静定トラスの応力計算
  • 第7回 不静定問題を解くためには

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