前回は、PM2.5 や SPM など、健康に与える影響が大きい物質の特徴や対応法を解説しました。最終回の今回は、大気に放出された二酸化炭素が原因である、気温上昇による地球気候変動への対応を、詳しく見ていきます。
第5回「地球気候変動への対応」を解説していきます。
1. 地球環境変動予測に対する考え方
COP21 および IPCC AR5
2015 年 12 月パリで、第 21 回地球環境変動枠組み条約締約国会議(COP21)が開かれました。「世界の平均気温上昇を、産業革命以前の気温に対し 2℃上昇より十分低く保つとともに、1.5℃上昇に抑える努力を追求すること」に向け、全ての国が排出量削減目標を作り提出すること、それを達成するための国内対策を取っていくことを取り決めました。この COP21 は、2013 年 から 2014 年 にかけて公表された IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に対する政府間パネル)の AR5(Assessment Report 5) をもとにした将来の地球気温の上昇と、それによる気候変動の予測に関し、論議・確認した結果です。
地球気温の上昇予測と対応
地球の気温上昇予測とその影響は、1988 年に設立された IPCC のもと、各国科学者や政策担当者が共同調査・研究を実施してきました。その間の研究・影響評価を踏まえた最新のレポートが、2013 年から 2014年にかけて報告されたAR5です。その中で検討された内容については、「3. IPCC AR5 概要」にて後述します。要点を表1に示します。
表 2 は、表 1 の内容を整理し、地球気温の状況と等価 CO 2 の対 2010年削減量と費用を示したものです。
この分析から分かることは、2100 年に近年(1986 年~2005 年)の平均気温より 1℃気温が上がることを許容するケース(IPCC AR5 のRCP2.6 シナリオ)では、温室効果ガス(GHG:Green House Gas)の排出を 2010 年に対し、2030 年には 55%、2050 年には 71% に削減する必要があり、実現不可能とも考えられる過大な努力が必要です。一方、2100 年に近年の平均気温より 1.2℃程度上昇することを許容するケースでは、2050 年に対 2010 年で 40% 程度の GHG 排出削減で対応できます。
2050 年くらいを考えれば、CO 2 排出の緩和だけを狙った技術開発のみではなく、増大するであろう気候変動災害や、熱中症をはじめ蚊・微生物などを媒介とする疾病への適応的方策の開発も、非常に重要ということになります。このとき、研究・技術開発は開発完了までに長い時間が必要なこと、成功時の効果は大きいが、成功の確率は必ずしも高くないことなどを考え、その目標は 2100 年の気温上昇を近年の気温に対し 1℃上昇するケース(RCP2.6 シナリオ)の GHG 排出削減にすべきとされています。
2. 地球温暖化への対応技術および技術開発
技術開発、技術対応項目とスケジュール
地球気候変動への対応は、社会政策的対策を含め、「緩和策」と「適応策」の両面から対応を取る必要があります。両方とも技術的対応を中心に取り組みます。それらは中期的対応と長期的対応を組み合わせることと、特に研究的要素も含んだ長期的な研究的対応にも重点を置くことが重要です。
GHG 排出対応における重点分野
技術開発事項・目標を考えるにあたって、まず GHG 排出のシェアを見ていきます(表 3)。表 3 における割合数値の大きさとエネルギー取扱い技術適用の単純さから、電力分野と運輸分野への取り組みが効果的で重要なことが分かります。また、電気の消費は、家庭・業務分野が多くを占めるため、それら分野における省エネ技術への取り組みも重要です。
個別技術開発項目、スケジュール
表 4 に、ある程度現実的な中期技術開発テーマと、GHG 排出をゼロとし、大気中の GHG を吸収固定する必要があるといわれている長期的・基礎研究的技術開発テーマを開発目標スケジュールで区別し、一覧表にしました。
3. IPCC AR5 の概要
全5回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 大気環境問題の歴史と法律
- 第2回 環境汚染対策のための技術
- 第3回 SOx・NOx・VOCの特徴や対応法
- 第4回 SPM・PM2.5・石綿の特徴や対応法
- 第5回 地球気候変動への対応