SPM・PM2.5・石綿の特徴や対応法|大気汚染対策の基礎知識4

大気汚染対策の基礎知識
著者:原技術士事務所 兼 化学工学会SCE・Net 原 晋一

前回は、大気汚染の原因となる代表的な物質の特徴や対応法を紹介しました。今回は SPM や PM2.5 など、健康に与える影響が大きい物質の特徴や対応法を、詳しく見ていきます。

第4回「SPM・PM2.5・石綿の特徴や対応法」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 粒子状物質の種類と性状

鉱山や石炭ボイラーの煙突からのばいじんや、セメント工場からの粉じんなどの公害問題は深刻な問題です。環境汚染物質としての用語も多くあり、1993 年に制定された環境基本法で、浮遊粒子状物質と微小粒子状物質の 2 つの用語に集約されました。

大気に浮遊する粒子の粒径は大体 10μm 以下です。粒径分布は 2μmと 0.1μm に谷のある 3 つの山で形成されています。健康に与える影響が大きく、疫学的情報が多い 2.5μm 以下の粒子は微小粒子状物質(PM2.5)、粒径 10μm から 2.5μm の粒子は浮遊粒子状物質(SPM)とされています。大気汚染防止法では、燃焼にともない発生する粒子状物質を「ばいじん」、燃焼以外の過程から発生する粒子状物質を「粉じん」としました。粉じんについても石綿を「特定粉じん」とし、それ以外を「一般粉じん」と区別しています。

しかし粒子状物質は形状、性状や大気中での状態が大きく異なるので、実際には粒子状物質の発生形態による粒子状物資の区分が重要になります。例えば、排出がボイラーなどの場合は集じん操作で対応したり、自動車排ガスのような場合は排出ガスでの対応だけでなく、燃料での対応を行ったりします。セメントの生産、粉砕操作、粉の貯蔵・運搬などにおいては密閉対応が重要になります。粒子状物質の処理方法を計画する上では、発生形態の把握がより重要になるといえます。

粉じんの性状
粒子径:粉じんの粒子径は、集じん方法を選ぶ上で最も重要です。通常、粉じんは平均粒子径と粒子径分布で示されます。粒子径の分布は、下記の式となります。
R = exp (-βdp n )
ここで、R:積算ふるい上分布(mass%)、dp:粒子径(m)、β:粒度特性係数(m -n )、n:分布指数または均等度(-)です。 この式の二重対数を取れば、次の式となります。
Log (-logR) = n (logdp ‒ logβ)
この式を線図として、縦軸に log(-logR)、横軸に logdp を取り、各種粉じんのデータをプロットすると直線になります(図1)。このような線図を、ロジン・ラムラー線図(Rosin Rammler Chart)といいます。粒子径とふるい上積算分布の組み合わせのデータが、2 セットあれば粒子径分布全体を知ることができます。同種の粉じんであれば1セットのデータで粒子径の分布の予測が可能となり、粒径を表すのによく使われます。

各種粉じんの粒子径分布
図1:各種粉じんの粒子径分布(引用:金岡千嘉男・牧野尚夫、 はじめての集じん技術、日刊工業新聞、2013年、P.4)

見かけ電気抵抗率:大規模かつ集じん程度を高くする集じん操作の典型は、電気集じん機です。この操作性能に大きく影響する粉じんの性質が、見かけ電気抵抗率です。この値が低いと異常再飛散が起こり、高いと逆電離現象により集じん率が低くなります。

濃度:単位体積の気体中の粒子の質量は、集じん設備におけるフィルタの集じん面積や、電気集じん機における電極の面積や、電極間距離などに影響する物性です。工業的には 10mg/m 3 から 100g/m 3 の範囲です。

粒子径、粒子密度:重力や慣性力などによる集じん操作は、粒子の運動特性に影響されます。集じんは粒子自体の移動速度と周囲のガスの移動速度の差を作り、粒子を捕集する操作です。粒子の移動速度への粒子物性の関与が重要になります。粒子の移動速度は次の式で表されます。粒子の径や密度が集じん性能に影響します。

v = (C m F D )/(3πμmd p )
ここで重力集じんの場合: FD=(π/6)dp 3 ρpg
遠心力集じんの場合:FD = (π/6)dp 3 ρp(vθ 2 /R)
電気集じんの場合: F D = qE

v:移動速度(m/s)、 Cm:カニンガムの補正係数(-)、 FD:ガスの抵抗力(N)、μm:ガス粘度(Pa・s)、 dp:粒子径(m)、 ρp:粒子密度(kg/m 3 )、g:重力の加速度(9.8m/s 2 )、 vθ:円周方向粒子速度(m/s)、R:回転半径(m)、 q:粒子の帯電量(C)、 E:電界強度(V/m)

2. 集じん装置の選定

各集じん装置の集じん率
集じんの方法は粒子径の大きさにより異なります。通常大気中を浮遊しない 10μm 以上の粒子径の大きい粉じんに対しては、重力沈降やルーバーによる慣性力を使います。それ以下の粒径の粉じんに対し 90%以上の集じん率を得ようとする場合、通常はバグフィルタや電気集じん機が使われます。また、サイクロンやベンチュリースクラバー方式も使われます。各集じん装置の部分集じん効率が図 2 です。バグフィルタの難点は、集じん効率は高いのですが、使用可能温度が 250℃と比較的低いことと、圧力損失が 1.0kPa~2.0kPa と高いことです。

各集じん装置における部分集じん効率
図2:各集じん装置における部分集じん効率(引用:化学工業会 東海支部、化学工学の進歩28 流体・粒子系分離、1994年)

集じん装置の種類と特徴
集じん操作には大別して 3 つの方式があります。1 つ目は、粒子に掛かる「力のみ」で粒子の捕集を行うものです。重力沈降法やルーバーやサイクロンでガスと、粒子の移動方向を変える方法があります。2 つ目は、力と障害物によるものです。スクラバーのような水滴に衝突させる方法です。3 つ目は、障害物のみによる方法です。バグフィルタやセラミックフィルタが主たる方法です。なお、電気集じん機は 1 つ目の原理を利用したものです。設備費用や運転費用は、重力の利用方式が安く、障害物利用方式は高くなります。なお、同じ力を利用する方式でも、電気集じん機はコスト的には一番高くなります。

表1は、集じん方式と対応する装置の比較表です。重力沈降法や慣性力利用法は除去できる粒子径から考えて、大気中を浮遊する粒子の集じんには効果のない方式のように見えますが、バグフィルタや電気集じん機の負荷を小さくする前処理装置としては大切な方式です。

集じん装置の分類と特徴
表1:集じん装置の分類と特徴(引用:産業環境管理協会、新・公害防止の技術と法規2016 大気編)

個別集じん装置
電気集じん機:電気集じん装置の原理は、放電極のコロナ放電で発生した負イオンがダスト粒子を負に帯電(荷電)させ、電気力により集じん極に集じんさせるものです。集じん特性は、圧力損失が少なく送風機などの周辺コストが安価であることと、小さい粒子径のところで部分捕集効率が上がるので、小粒径の粒子も集じんできるということです。粒子径 0.2μm から 0.5μm にかけて最低を示し、0.2μm から再び上がっています(図2)。これは粒子の帯電量qが粒子の表面積に比例するため、粒子径が小さくなると電極に向かう粒子移動速度が小さくなり集じん率は下がるのと、さらに粒子径が小さくなるとカニンガムの補正係数 Cmが大きくなり、粒子の移動速度が上がり、さらに集じん率が上がるためです。

一方、次のような課題もあります。工業的に排出されるダストにはいろいろな種類があります。電気集じん装置にとって最も難しいダストは、電気抵抗率が約 5×10 8 Ω・m 以上の高抵抗ダストです。逆電離現象を起こしやすいからです。集じん極に堆積した高抵抗ダストは、コロナシャワーをまともに受け、電界強度が高まり絶縁破壊を起こします。そして、逆帯電ダストを生み出し、それがプラスに帯電し、集じん極から飛散します(逆電離現象)。 一方、電気抵抗率が約 10 2 Ω・m 以下のダストは、集じん極へのジャンプと着地を繰り返し、捕集されずに排出される現象が起こります(異常再飛散)。そのほかにも、つち打ちによる再飛散があり、また、爆発性ガスや可燃性ダストには適していません。乾式電気集じん機の平均ガス速度は 0.5m/s~2m/s で、処理時間が数秒~10 秒あり、装置が大きくなり、高電圧を使うため、初期投資コストが高くなります。

隔壁形式集じん装置(バグフィルタ):隔壁形式集じん装置は、粒子を遮断物体で遮断し捕集する方法です。バグフィルタがその典型です。粒子捕集量の少ない運転初期は、炉布を容易にガスがすり抜けるため、粒子の捕集効率は低いものの、時間の経過とともに炉布上に堆積した粉じん層により遮られ、小さな粒子でも捕集できるようになります。集じん率はほぼ 100% にまで上がります。一方圧力損失は大きくなります。そこで、この方式では適当な間隔で堆積粉じんを除去して、連続運転を維持します。また、バグフィルタの場合は、繊維状物質が隔壁機能を持つものの、耐熱温度が 250℃程度と低いため、適用に制限が出てきます。見掛けろ過速度は、織布を使う場合は 2cm/s 前後、不織布を使う場合は 4~7cm/s とすることができます。

ばいじん・粉じんの測定技術
ばいじん・粉じんの測定は、JIS Z 8808:2013 にのっとり実施します。ダクトや煙道などを流れるダストのサンプリング操作は、ダストの代表サンプルを採る上で非常に重要です。

等速吸引:排ガス中にダストが含まれている場合、サンプルを採取するノズル入り口でのガスサンプリングの流速と、ダクトなどを流れる排ガスの流速が異なることがあります。粒子の慣性力により、ダクトなどを流れる粒子濃度とは異なる濃度の排ガスが、サンプリングノズルに流入してきます(図 3)。そこで、サンプリング口でのガス速度と、ダクトを流れるガスの速度を同じにする必要があります。

ダストサンプリングにおける吸引速度とダスト濃度
図3:ダストサンプリングにおける吸引速度とダスト濃度

サンプリング位置:サンプリングは流れに乱れの無い位置で行う必要があります。具体的には、ダクトの屈曲部、断面形状の急激に変化するところから、ダクト直径または縦寸法の 1.5 倍以上離れた位置でサンプリングを行います。また流体中における偏った濃度分布でのサンプリングを防ぐため、流速は 5m/s 以上の場所で行います。

3. 排ガス(PM2.5)の対策

4. 特定粉じん(石綿)の対策

5. 有害大気汚染物質の種類と対策

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全5回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 大気環境問題の歴史と法律
  • 第2回 環境汚染対策のための技術
  • 第3回 SOx・NOx・VOCの特徴や対応法
  • 第4回 SPM・PM2.5・石綿の特徴や対応法
  • 第5回 地球気候変動への対応

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