SOx・NOx・VOCの特徴や対応法|大気汚染対策の基礎知識3

大気汚染対策の基礎知識
著者:原技術士事務所 兼 化学工学会SCE・Net 原 晋一

前回は、環境汚染物質の処理と、その事例として、重油燃料の燃焼における前対応と後対応、炭酸ガス捕集における対応を解説しました。今回は、環境汚染物質への個別の対応技術を解説します。硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)など、大気汚染の原因となる物質の特徴や対応法を紹介します。

第3回「SOx・NOx・VOCの特徴や対応法」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 大気汚染に関する環境基準と排出基準

環境基準は環境基本法第 16 条に示されています。人の健康を保護し、および生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準で、工場や事業場に対する規制の基準である排出基準とは異なります。各排出施設において順守すべき硫黄酸化物の排出基準は、大気汚染防止法施行規則第 3 条に示されている計算式(地域ごとの係数と、排出ガスの拡散に係る補正をした排出口の高さの2乗の積で表される)で算出される硫黄酸化物の量です。環境基準は表 1、 硫黄酸化物(SOx)以外の大気汚染物質の排出基準は、主な排出施設の基準を表2にまとめます。

大気汚染に係る環境基準から一部抜粋
表1:大気汚染に係る環境基準から一部抜粋(出典:新・公害防止の技術と法規 2016 大気編、産業環境管理協会)
 ばいじんとNOxの排出基準値一覧から一部抜粋
表2: ばいじんとNOxの排出基準値一覧から一部抜粋(引用: 環境省ホームページ)

2. 硫黄酸化物(SOx)

硫黄酸化物(SOx)排出防止技術
硫黄酸化物(SOx)は、発電プラントの大型ボイラーと産業用の中・小型ボイラーから多く排出されます。発電用大型ボイラーの排煙脱硫プロセスの主力は、石灰スラリー吸収法(石灰石こう法)です。中小型の排煙脱硫の場合は、水酸化マグネシウムスラリー吸収法(水マグ法)が使用されています。前者は副産品が石こう (CaSO 4 ・2H 2 O) で、後者は硫酸マグネシウム(MgSO 4 )です。副産品において、後者は排液中の固形分などの環境上の問題があり、前者にも副産石こうに含まれる炭素分など未燃く物の混入もあり、新たに両者を組み合わせた水マグ石こう法が開発されました。

石灰スラリー吸収法(石灰石こう法)
石灰スラリー吸収法は湿式排煙脱硫法で、硫黄酸化物(SOx)を石灰石 (CaCO 3 ) や消石灰 (Ca(OH) 2 ) の水溶液スラリーに吸収反応させ除去する方法です。

反応式:SO 2 +CaCO 3 +1/2H 2 O→CaSO 3 +CO 2 +1/2H 2 O (吸収)
CaSO 3 +1/2O 2 +2H 2 O→CaSO 4 ・2H 2 O     (酸化)

このフローを図 1 に示します。酸化用空気の吹き込みは、図 1 のように吸収塔ボトム部に行う場合と、別に設置された酸化槽で行う方法があります。スラリー循環液量は 17 l/Nm 3 ‐排ガス量程度必要で、100MWの発電プラントの場合、5,000kl/h弱の吸収液の循環が必要です。

石灰スラリー吸収法排煙脱硫プロセス
図1: 石灰スラリー吸収法排煙脱硫プロセス(引用: クボタ化水化学石灰石こう法(湿式))

水酸化マグネシウム石こう排煙脱硫法(水マグ石こう法)
最初に、水マグ石こう法のベースとなる水マグ法の説明をします。この方法は石灰石こう法のプロセスフローと似ています。水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )を吸収剤にし、排液中の固形物を除去するろ過操作を中心とした排液処理部を設置する方法です。この方法の特徴は、吸収液の循環量を小さくできることと、無害で水への溶解度の高い硫酸マグネシウム(MgSO 4 )が排液であることです。ただし、この方法も排液中にろ過しきれない微量の固形分が混入するので、廃液問題や高価な水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )消費の問題が発生します。石灰石こう法でも、副産される石こう粒径が小さい場合は、水分除去が不十分であったり、燃焼排ガス中の未燃炭素分などが石こうに付着したまま産出され、ドロドロの石こうや黒色の石こうであったりするため、副産品価値に問題が生じます。そこで、二酸化硫黄(SO 2 )の吸収能力の高い水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )と、副産物として有価な石こうを副産できる両方の特徴を持つ「水マグ石こう法」が開発されました。

(吸収工程) SO 2 +Mg(OH) 2 →MgSO 3 +H 2 O
(酸化工程) MgSO 3 +1/2O 2 →MgSO 4
(複分解工程) MgSO 4 +Ca(HO) 2 +2H 2 O→CaSO 4 ・2H 2 O+Mg(OH) 2

このプロセスでは、石灰石こう法より大きい結晶サイズの石こうを作ることができます。それは複分解工程で還元再生され吸収塔に再循環される水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )の粒子の滞留時間に比べ、生成する石こうの滞留時間を格段に長く取り、石こうの結晶粒子の成長を図ることができるからです。また、水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )はリサイクル利用できるので、新たに補給する水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )は少量で済みます。図 2 に水マグ法のフローを示します。

水酸化マグネシウム石こう肺炎脱硫プロセス
図2:水酸化マグネシウム石こう肺炎脱硫プロセス(引用:道木英之・宮川久司、技術革新と社会変革、第1巻、第1号、社会技術革新学会、2008年、P.33-34)

石灰石こう法と水マグ石こう法の比較
表 3 に石灰石こう法と水マグ石こう法の比較を示します。

石灰石こう法と水マグ石こう法の比較
表3:石灰石こう法と水マグ石こう法の比較

3. 窒素酸化物(NOx)

4. 揮発性有機化合物 (VOC)

5. 光化学オキシダント

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全5回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 大気環境問題の歴史と法律
  • 第2回 環境汚染対策のための技術
  • 第3回 SOx・NOx・VOCの特徴や対応法
  • 第4回 SPM・PM2.5・石綿の特徴や対応法
  • 第5回 地球気候変動への対応

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