前回は、大気環境問題の歴史と法律、大気汚染物質について、解説しました。今回は、環境汚染対策における汚染物質処理の基本的方向、処理位置の選択について、解説します。汚染物質の生成場所に対し、前の対応か、後の対応かを選択するのが重要です。環境汚染物質の処理と、その具体例として、重油燃料の燃焼と炭酸ガス捕集における対応を紹介します。
第2回「環境汚染対策のための技術」を解説していきます。
1. 環境汚染物質の除去における処理
環境が汚染された状態は、自然環境に「汚染」物質が存在する状態だといえます。その汚染物質を除去するには、汚染物質を分離し、濃度を高くして分離、捕集、除去の操作をする必要があります。この操作はエントロピーを減少させることを意味し、そのためにはエネルギーの投入が必要となります。
そこで、できれば対象の汚染物質が濃縮状態にあり、反応変化を受ける前の状態で分離すれば、エネルギー投入をより少なくできます。このことを念頭に、各環境汚染物質の除去方法を、「前対応」と「後対応」に分けてまとめてみると、表 1 のようになります。
表 1 のように多くの場合、原料調整業種と最終製品生産業種が異なるため、前対応、あるいは反応物対応と後対応、あるいは反応生物対応の「組み合わせ」が必要で、業種間の最適化が必要です。特に新しい課題に対しては、業種間の総合的比較・調整が重要です。また大規模な活動に起因する場合、例えば石化燃料の燃焼に伴うSOx や NOx には、前対応が重要です。
化石燃料の燃焼においては、多くの経済的実績のもと、前対応と後対応の選択システムが既に確立しています。新しい課題に対しては、経済性が実績に基づき判明する前の考察に非常に意味があります。さらに、行政に任せることなく業種間、産業と行政間の考察が重要になります。
2. 事例1: 重油燃料の燃焼における前対応と後対応
図 1 は、重油燃焼発電における、電力業での排煙脱硫と石油業による重油脱硫の比較です。同じ送電端発電量を得るのに、前対応の方が、原料の高硫黄重油の量が少なくて良いことが分かります。
これは、原料中の硫黄成分や窒素成分が水素化と反応し、容量が大きくなり、質量当たりの発熱量が高い石油製品に変わることが考えられます。熱力学的には前処理において、エントロピーの低い状態の硫黄物の除去が可能だということです。
しかし、脱硫率は、排煙脱硫は 95% 以上に対し、重油(直接)脱硫は94% 程度と、重油脱硫の方が低くなっています。そのため、大規模発電においては、排出する硫黄酸化物の総量を低くする必要性から、排煙脱硫が多く採用されます。ただし、工業加熱炉などの比較的規模の小さい加熱炉の場合、燃料は低硫黄重油を使用するケースが多く見られます。このように実際には、エネルギー・物量的検討だけではなく、総合的な観点による対応の検討が必要です。
3. 事例2: 炭酸ガス捕集における対応
全5回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 大気環境問題の歴史と法律
- 第2回 環境汚染対策のための技術
- 第3回 SOx・NOx・VOCの特徴や対応法
- 第4回 SPM・PM2.5・石綿の特徴や対応法
- 第5回 地球気候変動への対応