前回は、特殊な空調設備について紹介しました。今回は、空調設備と省エネルギーについて説明していきます。
第7回「空調設備と省エネルギー」を解説していきます。
第7回もくじ
1. 省エネルギーに関する基準
現在、一定規模以上の非住宅建築物を新築・増改築する際には、2015年7月に制定された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」に適合する必要があります。この省エネ性能の評価には、一次エネルギー消費量基準BEI(BuildingEnergy Index)と、外皮基準PAL*(Perimeter Annual Load)が用いられます。
・一次エネルギー消費量基準BEI
BEIは、以下の式で表すことができます。1.0以下で省エネ基準を達成していることになり、数値が小さいほど省エネルギー性能が高いことを示します。
設計一次エネルギー消費量とは、評価対象の建築物に、設計仕様の設備を導入した際にかかる一次エネルギー消費量のことであり、空調設備もこれに含まれます。基準一次エネルギー消費量とは、同じ評価対象建築物に対して、省エネ基準に基づく標準仕様の外皮・設備を導入した際にかかる一次エネルギー消費量のことです。
・外皮基準PAL *
外壁や窓周辺(ペリメータゾーン)の年間熱負荷係数のことであり、以下の式で表すことができます。
外壁や窓などの外皮計画による空調負荷の抑制を評価するもので、数値が小さいほど外皮性能が高いことを示します。
2. ペリメータレス空調
ぺリメータレス空調とは、ぺリメータゾーンにおける外部からの影響を解消する目的で作られた空調設備のことです。ぺリメータゾーンとは、外壁や窓から5m程度までの空間です(第2回)。ペリメータゾーンは、日射などにより熱負荷が大きくなるため、専用の空調機を設置することがあります。そのため、システムが複雑化し、配管などの通過経路も大きく確保する必要が出てきます。その点、ペリメータレス空調は、窓周辺を工夫するだけでその熱負荷を減らすことができます。ここでは、代表的な手法であるエアフローウインドウを紹介します。
エアフローウインドウとは、窓を二重化することで日射熱などの侵入熱を2枚の窓ガラスの間にいったん封じ込め、そこに室内から空調機に送る還気を流す空調方式です(図1)。窓ガラスの間に溜(た)められた熱は、還気と一緒に空調機に送られる(もしくは排気される)ため、室内への熱の侵入を軽減することができます。
3. 自動制御設備
空調設備において、省エネルギーと快適性を両立させるためには、自動制御設備が必須のものとなっています。熱負荷に応じて搬送空気の量を調節する変風量単一ダクト(VAV)方式はその代表的なもので、第2回で紹介したとおりです。ここでは、空気の量ではなく、水の量を変化させる変水量(VWV:Variable Water Volume)方式と、水の量を一定にして行う定水量(CWV:Constant Water Volume)方式を紹介します。
空調機なのに水? と思うかもしれませんが、思い出してみてください。AHU(Air Handling Unit)を用いる場合、冷房時には冷凍機で製造された冷水がAHUの冷却コイルへと送られ、そこで空気と熱交換を行い、温度が上がった冷水を再び冷凍機で冷却するということを繰り返しています(第3回)。空気温度が高い時には冷水の循環量を多く必要とする一方、空気の温度が目標値に近くなると、冷水の循環量は少なく済みます。
・定水量(CWV:Constant Water Volume)方式
定水量(CWV)方式は、冷水または温水の流量を変えず温度で制御を行う空調方式です。図2のように、冷却コイルへの循環量を調節するために一部の冷水をバイパスさせます。よって、三方向からの水の流れを制御することになり、三方弁方式とも呼ばれます。これにより、冷却コイルへの冷水量は減少する一方、バイパスさせる冷水の搬送エネルギーが無駄となり、省エネとはいえません。
・変水量(VWV:Variable Water Volume)方式
変水量(VWV)方式は、建物の負荷変動に合わせて水量制御を行う空調方式です(図3)。変水量方式(VWV)では、二方弁方式と呼ばれるポンプのインバータ制御により冷水の量そのものを調整し、無駄な搬送エネルギーを削減することができます。よって、変水量(VWV)方式は、定水量(CWV)方式より、省エネ上優れているといえます。
4. 自然エネルギーの活用
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 空調設備とは
- 第2回 空調設備の種類
- 第3回 中央空調方式について
- 第4回 個別空調方式について
- 第5回 空調図面について
- 第6回 特殊な空調設備について
- 第7回 空調設備と省エネルギー
- 第8回 空調設備の汚染状況
- 第9回 空調設備の維持管理