前回は、空調設備の図面の種類や、図面中の表示記号を紹介しました。今回は、特殊な空調設備について説明していきます。
第6回「特殊な空調設備について」を解説していきます。
1. 蓄熱式空調設備
蓄熱式空調設備とは、建物を空調している日中の時間帯に加え、エネルギー需要が少ない夜間にヒートポンプを稼働させて、冷水、氷、湯などで熱エネルギーを蓄えておき、日中に使用する設備のことをいいます。蓄熱式空調設備は、熱を製造する冷凍機などの熱源機と、熱を消費する二次側の空調機が、蓄熱層を介することで別々に切り離された開放回路方式となっています。
第3回、第5回で説明したAHUを用いた空調方式では、冷却コイルで空気と熱交換することにより温度が上がった冷水が、すぐに冷凍機に送られ冷却された後、再び空調機の冷却コイルへと送られます。このように、一般的な空調方式は、冷凍機などの熱源機と二次側の空調機とが配管によって直結された密閉回路方式で形成されており、冷凍機での熱の製造(冷却水の冷却も含む)と、空調機での熱の消費が同時に行われています。夏季の気温が高い日には、日中、多くの建物でこの現象が同時に発生するため、冷凍機での冷却に多くの電力が用いられることになります。これに対し、蓄熱式空調設備は、熱の製造と消費を同時に行わない特殊な空調方式として利用が進んでいます。
図1を用いて、蓄熱式空調設備の冷房時を例に解説します。空調機の冷却コイルで空気から熱を奪い温度が上がった冷水は、日中は蓄熱層に運ばれます(a)。蓄熱層に溜まった冷水は、夜間に冷凍機を用いて冷却され(b)、蓄熱層に溜(た)められます(d)。日中は、夜間に冷却された冷水を空調機に送り(c)、冷却コイルで空気を冷やします。このサイクルを繰り返すことで、熱の製造と消費をリアルタイムで行う必要がなくなり、都合の良い時間帯に熱を製造し蓄えておくことが可能になります。
図2は、ピークシフトを示します。ピークシフトは、夜間から早朝にかけて蓄えた熱を、日中の空調時間の全域において一定の割合で利用し、日中の空調電力をシフトする運転パターンのことをいいます。
また、図3は、ピークカットを示します。ピークカットは、蓄熱を空調時間の特定の時間帯に集中して利用し、電力消費のピーク時に空調電力をカットする運転パターンをいいます。
このように、蓄熱式空調設備では昼間の負荷のピークを平滑化できるため、一般に冷凍機容量が小さくなります。また、昼間の負荷変動にかかわらず、夜間に運転する冷凍機などの熱源機は高効率で運転できます。夜間と日中にまたがり運転するため運転時間は長くなるものの、深夜電力が安価に設定されている場合、ランニングコストの低減が可能になります。
2. 地域冷暖房システム
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 空調設備とは
- 第2回 空調設備の種類
- 第3回 中央空調方式について
- 第4回 個別空調方式について
- 第5回 空調図面について
- 第6回 特殊な空調設備について
- 第7回 空調設備と省エネルギー
- 第8回 空調設備の汚染状況
- 第9回 空調設備の維持管理