前回は、接着剤の選定方法と、選定接着剤の適否を判定する方法を説明しました。今回は、接着における強度の考え方について解説します。接着剤の強度は、一般的に試験で破断が生じた時点の強度で表されます。しかし、これを実際の強度と考えてはいけません。接着強度の考え方を見直すと同時に、実際の接着強度が破断強度よりも低下する要因を学びましょう。
第6回「接着における強度の考え方」を解説していきます。
1. 破断強度が接着強度にならない理由
カタログに接着剤の強度として示されている数値は、一般的に、試験を行って破断が生じた時点の値、つまり破断強度です。しかし実際に使用する際には、示された数値よりも低い値で接着部が破断することがあります。破断強度を接着強度と見なすことは、とても危険です。
実際の接着強度を考える際に、考慮すべき3 つのポイントがあります。
・内部破壊の繰り返しによる破断
・接着強度のばらつき
・温度、劣化などによる強度低下
以上の3 点を踏まえ、実際の接着強度の数値をどう算定すべきか、説明します。
2. 接着強度と内部破壊
図1 を見てみましょう。接着試験体に荷重を負荷していくと、接着部は徐々に変形し、最終的に破断を起こします。しかし破断するより低い荷重でも、接着内部では亀裂発生などの細かな破壊が起こっています。これを内部破壊といいます。内部破壊が蓄積すると、破断強度より低い負荷でも破断が起こります。
最初に内部破壊が生じる荷重(内部破壊発生開始強度)より高い負荷が接着部に繰り返し加わると、そのたびに内部破壊が起こり、やがて破断する可能性があります。そのため、内部破壊発生開始強度を接着強度と捉える必要があります。
内部破壊発生開始強度は、どのように算定すればよいでしょうか。接着剤、被着材が同じでも、試験時の破壊部分の状態が凝集破壊か界面破壊かで値は大きく異なります(参照:第1 回)。著者がアコースティック・エミッション法(AE 法。破壊により、弾性波として放出される内部蓄積エネルギーを測定し、破壊過程を評価する手法)で測定した結果では、内部破壊発生開始強度は、凝集破壊する場合は破断強度の1/2 以上、界面破壊する場合は1/10 以下でした。第1 回で、界面での結合を強化して凝集破壊にしなければならないと述べたのは、このためです。
繰り返し荷重が加わる場合には、内部破壊発生開始強度はさらに低くなります。10 7 回程度、繰り返し荷重がかかる場合の内部破壊発生開始強度は、静的破断(引張、圧縮、延性、ぜい性による破断)強度の約1/4と考えられます。
3. 接着強度のばらつき
4. 温度・劣化による接着強度の低下
5. 実際の接着強度とは
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 接着の原理とは?高信頼性・高品質接着とは?
- 第2回 接着の最適化とは?内部応力とは?
- 第3回 構造用接着剤の種類と選び方
- 第4回 エンジニアリング接着剤とは?
- 第5回 接着剤の選び方
- 第6回 接着における強度の考え方
- 第7回 接着部品の構造設計
- 第8回 接着施工のポイント