5S 活動は、利益と密接な関係を持っています。「片付けたくらいで利益など出るはずがない」という手厳しいご意見を耳にすることもあります。しかし、全社一丸になって5S 活動を推進し、清潔・しつけまで順守できている組織の多くは、しっかりと利益を上げています。今回は、現場から利益を生み出すために、なぜ5S 活動が有効なのか、ご紹介します。
第6回「現場から利益を生み出す」を解説していきます。
1. 利益を認識することが重要
5S 活動が進むと、用具の置き場所や通路の確保、仕事の手順や情報共有の仕方、あいさつや電話対応といったマナーについてまで、仕組みを再構築します。その結果、5S活動が始まる前よりも、やるべきことと、やめるべきことの理解が進みます。例えば、「きちんと片付ける」「ちゃんと掃除する」という指示は具体的ではありません。5S 活動により、どのように片付けるのかが明確になり、個人の感覚で行っていた業務活動に統一感が出てきます。
利益に対する考え方も同様です。会計用語としての「利益」は抽象的で分かりづらく、組織として共通の認識を持つことは難しいものです。しかし、5S 活動と同様に、明確で統一された認識を全社員が持つことができれば、組織の利益体質は大きく変化します。
2. 絶対利益という新しい概念
組織では、さまざまな数字がコミュニケーションツールとして使われています。売上、利益、損益、前年対比、前月対比、粗利益などがあり、それぞれに意味のある数字です。しかし組織の全員が、これらを正確に理解できているわけではありません。例えば、決算書には売上総利益、経常利益、営業利益、税引前当期純利益、純利益という5 つの利益が登場します。これらを、組織のさまざまな立場の人たちに理解させるのは至難の業です。そこで、利益という言葉を、原理原則に従って再構築してみましょう。
組織には、これだけ集められなければ倒産するという、最低限度の利益額があります。この利益のことを、絶対に集めなければならない利益として、「絶対利益」と定義します。絶対利益は、視点を変えれば、絶対に支払わなければならない経費です。組織には、仕事がなく、売上がゼロでも必要な4 つの経費があります。
1:固定費:人件費や賃貸、リース、一般管理費、長期借入金返済費など
2:税金積立費:予定されている納税に対する積立費用
3:短期借入金返済費:金融機関からの借り入れに対する返済費用
4:運営費:採用や設備投資など、組織を1 年間運営するための費用
これらの合計金額は、絶対に支払わなければならない経費です。1 年の間にこれらの合計金額を集めることができれば、組織は倒産しません。つまり、絶対利益はこれらの合計金額と同じ値です。
絶対利益 = 固定費 + 税金積立費 + 短期借入金返済費 + 運営費
絶対利益を用いて考えるメリットは、絶対利益の中に社員の給料やボーナスが含まれている点です。生活や人生と結びついた金額、数字であるため、どの立場の方であっても、絶対利益の重要性はすぐに認識してもらえます。社員全員でこの金額を集めようと決めると、スムーズに同意を得ることができます。表1 および図2 に、絶対利益の算出例を示します。絶対利益は過去数年間の決算書を参考に作成すると、妥当な目標として納得感を得やすいです。
3. 変動費の削減に集中する
4. 絶対利益と5S 活動との親和性
5. 利益は現場に眠っている
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 5S活動に取り組むべき理由
- 第2回 5S活動の整理とは?
- 第3回 5S活動の整頓とは?
- 第4回 5S活動の清掃・清潔・しつけとは?
- 第5回 5Sルールと組織風土
- 第6回 現場から利益を生み出す
- 第7回 5S活動と教育訓練
- 第8回 5S活動の目的と効果