照明計画|照明の基礎知識6

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2024.10.01

基礎知識

照明計画|照明の基礎知識6

照明の基礎知識

著者:放送大学奈良学習センター 所長 特任教授 井上 容子

前回は、視環境計画の要件のうち、「明るさ」「グレア」「立体感、陰影、材質感」「色の見え」について解説しました。最終回の今回は、まず、照明設計の手順と照明方式について概説し、照明の質的要件を達成するための、光の時空間分布の計画法を紹介します。空間分布としては「タスク&アンビエント照明」、時間分布としては「調節時間」を取り上げます。

第6回「照明計画」を解説していきます。

 

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1. 照明計画の手順

照明計画は、屋内照明、屋外照明、交通照明、スポーツ照明、防犯・防災照明の5種に大別されます。事例が豊富でそのマニュアル化も進んでおり、実務としては多くの場合、経験値に基づいて行われています。とはいえ、利用者と利用目的に適うよう、科学的で合理的なプロセスに則って、照明要件を満たした適切な光環境を提供することが求められます。一方、プロセスにとらわれ過ぎることなく、個々の案件によって柔軟に対応することも大切です。以下に、照明計画の一般的な手順を紹介します。

(1)敷地条件、建物の配置、用途・目的など建築計画の把握
(2)平面計画、対象室の大きさ・内装・什器の配置の確認
(3)利用目的・形態、利用者の年齢構成、動線計画の確認
(4)上記(1)~(3)に基づいて、各照明要件(照明の基礎知識4、5)の必要度を検討し、それぞれの設計値を決定
(5)設計値を達成する照明方式、光源・照明器具(照明の基礎知識2、3)を決定し、将来的な室のレイアウト変更などへの対応も考慮して、器具の配置を計画
(6)照明制御の必要度を検討し、配線計画、有線・無線、センサ等による自動制御(照明の基礎知識3)など、照明制御方法の決定
(7)設計値の達成状況、維持管理(ランニングコスト:照明の基礎知識2)の容易さ、消費エネルギーの妥当性等のシミュレーションを行い、必要に応じて計画を変更

照明計画は、建築計画が決まり、平面・立面、時には内装も決まった後に行われがちです。しかし、本来は建物の配置計画や平面・内装計画と同時進行で行われることが理想です。前者は昼光併用照明の検討に、後者は器具とその配置計画に関わってくるためです。

2. 直接照明と間接照明

拡散性の高い光は柔らかく、指向性の高い光は陰影を生じさせます。このバランスは、視対象と照明器具の位置関係、つまり光の照射方法によって調整することができます。そのために、さまざまな配光の照明器具が開発され、また、光源を建築と一体化させる建築化照明が取り入れられています(照明の基礎知識3)。照明器具(光源)から直接出てくる光は直接光、壁や天井にあたって一回以上反射した光は間接光(反射光)と呼ばれます。

照明器具の配光やカバー素材、および室内の内装素材による違いはあるものの、一般に直接光は指向性が高く、間接光は拡散性が高くなります。直接光で視対象や空間を照明する場合を直接照明、間接光で照明する場合を間接照明といいます(図1)。

直接照明と間接照明(スポットライトの例)
図1:直接照明と間接照明(スポットライトの例)

直接照明では、陰影ができやすいため立体感が生まれ、凹凸の判断が容易です。ただし、照射方向を誤ると陰影が強くなりすぎたり、手暗がりになる場合があります。

間接照明は、器具の高輝度部分が直接見えないため不快なグレア(まぶしさ)が生じにくく、また、拡散性が高いため均質で柔らかい光が得られます。一方、影がなくなるため、のっぺりとした空間となり、活気のない陰鬱な雰囲気になる場合もあります。また、反射光を利用するため、光源からの光の利用効率が低くなり、直接照明に較べて多くの照明用エネルギーを消費します。

3. 全般照明と局部照明

4. タスク&アンビエント照明

5. 調節方法(調節に必要な時間)

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 照明とは
  • 第2回 光源の種類と特徴
  • 第3回 照明器具
  • 第4回 視環境計画の要件(前編)
  • 第5回 視環境計画の要件(後編)
  • 第6回 照明計画

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