誘導発電機とは|発電機の基礎知識7

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2024.11.11

基礎知識

誘導発電機とは|発電機の基礎知識7

発電機の基礎知識
 
著者:秋田県立大学 名誉教授 穴澤 義久

前回は、同期発電機の並行運転を紹介しました。今回は、最終回です。誘導発電機の原理と、他励式、および自励式誘導発電機のしくみを解説します。誘導発電機は、電源に接続された誘導電動機を原動機によって駆動し、同期速度以上に回転数を上げることで、より多くの電力を得るための装置です。電力系統に接続する際、同期化の操作が必要ないため、小容量の水力発電機や風力用発電機として使用されています。

第7回「誘導発電機とは」を解説していきます。

 

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1. 誘導発電機の原理

図1 は、誘導電動機の簡易等価回路です。r1、r2‘ を1 次および2 次巻線抵抗、jx1、jx2‘ を1 次および2 次漏れリアクタンス、g0 を励磁コンダクタンス、b0 を励磁サセプタンスとします。

誘導電動機の簡易等価回路
図1:誘導電動機の簡易等価回路

ここで、滑りs を1.5 から-1.5 まで変化させ、機械的出力、トルク、および1 次入力を計算すると、図2 の速度特性曲線が得られます。n0 を同期速度、n2 を回転速度、f を回転子導体に働く力とします。

誘導電動機の速度特性曲線と動作領域
図2:誘導電動機の速度特性曲線と動作領域

滑りs<0の領域では、1次入力、トルク、および機械的出力は負となります。このとき、一定電圧、一定周波数の電源に接続されている誘導機の回転子は、回転数n2=(1-s)n0>n0、すなわち、同期速度以上の回転数で、回転磁界と同一方向に回転しています。この領域では、機械的出力は負の値を示し、外部から機械的なトルクを加えることによって、同期速度以上になることが分かります。機械的出力が負であるということは、機械的な入力を表し、また、1 次入力が負であるということは、電気的出力を表します。このように、電源に接続された誘導機は、同期速度より数% 速度を上げることで、誘導発電機として動作します。

2. 他励式誘導発電機

誘導発電機の原理で述べたように、誘導発電機の回転子に外力を加えて同期速度以上に回転すると、誘導発電機として動作します。このような原理に基づいた発電機を、他励式誘導発電機といいます。図3 は、他励式誘導発電機の空間ベクトル図です。固定子1 次巻線は電源に接続されているため、励磁電流I0 が流れ、同期速度ω0 で回転する磁束Φが発生します。

誘導発電機の空間ベクトル図
図3:誘導発電機の空間ベクトル図

固定子巻線の誘導起電力E1 は、磁束が静止して固定子巻線が右方向に回転していると考えると、図の⊗◉の方向で、電動機の場合と同じです。1 次巻線の誘導起電力の空間ベクトルE1 は、ある瞬時において最大値となっているコイルの巻線軸方向に右ねじ系に取るものとすれば、図3 のようになります。

回転子巻線は、磁束に対してn2-n0 で左方向に回転しているので、2 次誘導起電力の空間ベクトルsE2 は電動機の場合と逆方向になります。2次導体の電流が最大となるのは、起電力が最大となった瞬間からφ2 だけ時間的に遅れます。しかし、回転子はω21 で回転しているため、I2 が最大の導体位置は空間的に電気角でφ2 だけsE2 の最大の位置より進みます。従って、このI2 による起磁力を打ち消すために、1 次側にはI1‘ の電流が流れ、1 次電流としてI1=I0+I1‘ が流れます。

この空間ベクトル図から図4 のフェーザ図が得られます。すなわち、逆起電力E1‘=-E1 に、1 次巻線抵抗による電圧降下r1I1 と1 次漏れリアクタンスによる電圧降下x1I1 を加えたものが電源電圧V1 になります。

誘導発電機のフェーザ図
図4:誘導発電機のフェーザ図

誘導機が接続されている電源の電圧V1 を基準に考えると、図のようにV1 と、I1 の位相差φ1 は90°よりも大きいので、1 次入力P1=m1V1I1cosφ1 は負となります。すなわち、誘導機は電源より遅れ無効電力m1V1I1sinφ1 の供給を受けながら、発電機として|P1| の電力を電源に返還しています。

他励式誘導発電機は、以下の利点があります。

• かご形誘導電動機を用いることができるので、回転子構造が簡単で価格も安く、保守も容易である
• 同期化の操作が不要であり、乱調、および同期外れの現象がない
• 短絡事故のときには励磁電流がなくなるので、短絡電流が小さく、また、その持続時間も短い

これらの利点によって、大電力系統に接続される小出力の水力発電所や、風力発電所などに使われています。

3. 自励式誘導発電機

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 発電機とは
  • 第2回 発電機の誘導起電力
  • 第3回 同期発電機の仕組み
  • 第4回 同期発電機の特性
  • 第5回 無負荷特性曲線と短絡曲線
  • 第6回 同期発電機の並行運転
  • 第7回 誘導発電機とは

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