同期発電機の並行運転|発電機の基礎知識6

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2024.11.11

基礎知識

同期発電機の並行運転|発電機の基礎知識6

発電機の基礎知識
 
著者:秋田県立大学 名誉教授 穴澤 義久

前回は、同期発電機の無負荷特性曲線と短絡曲線を紹介しました。今回は、同期発電機の並行運転を解説します。並行運転とは、複数の発電機を並列につないで運転することです。これにより、運転効率を向上できるなど、さまざまなメリットがあります。

第6回「同期発電機の並行運転」を解説していきます。

 

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1. 同期発電機の同期化

同期発電機は、全負荷付近で運転したとき、最も効率が高くなるように設計されています。しかし、負荷は時間の経過によって変動します。そのため、2 台以上の発電機を並列につなぎ、負荷の変動に応じて運転台数を変えることで、全負荷が各発電機に均等にかかるようにします。これにより、発電所全体の運転効率だけでなく、電力供給の信頼性を高めることができます。これを、同期発電機の並行運転といいます。

同期発電機を並行運転するには、いくつかの条件があります。まず、各発電機の定格電圧と定格周波数が等しく、誘導起電力の電圧波形は、できる限り一致していなければなりません。また、各原動機が均一な速度で回転していること、速度特性曲線が下降特性であることも必要です。さらに、容量に応じた負荷分担をするために、百分率で表した速度特性曲線が一致している必要があります。

同期発電機を並列状態に入れることを同期化といいます。図1 は、同期発電機の並行運転の回路図です。発電機SG1 がある負荷を負って運転しているとき、これと並列に発電機SG2 を接続するには、まずSG2 を始動してこれに励磁を与えます。そして、周波数計と電圧計を見ながら、SG2 の無負荷端子電圧の周波数と大きさが共通母線の値と等しくなるように、界磁電流、および原動機の速度を調整します。

同期発電機の並行運転
図1:同期発電機の並行運転

次に、同期検定器Sy を見ながら、原動機の速度を調整し、電圧の位相が一致した瞬間に遮断器S2 を閉じます。この条件が満足されていないと、遮断器を閉じた瞬間に過大な突入電流が流れ、これが著しい場合には、遮断機が動作して自動遮断したり、発電機に大きな衝撃を与える恐れがあります。

同期検定器にはさまざまな方式があります。最も簡単な方式は、3 個の電球L1、L2、L3 を、端子a1a2、b1c2、c1b2 の間に接続したものです(図2)。S2 の母線側端子はa1、b1、c1、発電機側端子はa2、b2、c2 です。

同期検定灯の原理
図2:同期検定灯の原理

ここで、発電機の周波数が少しずれていると、図2 の左に示すように、αが時間とともに変化するため、L1、L2、L3 は明るさを変えながら点滅し、光が回転するように見えます。周波数と位相が完全に一致していると、図2 の右のように、L1 が消え、L2、L3 は同じ明るさになります。相回転が異なる場合、L1、L2、L3 は、一斉に点滅します。これを同期検定灯といいます。

2. 同期発電機の並行運転時の現象

図3 は、2 台の同期電動機が並行運転しているときの、1 相あたりの等価回路です。ここで、両機の無負荷誘導起電力E01E02、同期リアクタンスjxs1、jxs2、電機子電流I1I2、全負荷電流I です(電機子巻線抵抗は無視します)。

並行運転時の等価回路
図3:並行運転時の等価回路

このとき、以下の関係式が成り立ちます。

これらの式からI1I2 を求めることができます。

ただし、I1‘、I2‘、Ic は、以下の通りです。

I1‘、およびI2‘ は、E01=E02 の場合のSG1、およびSG2 の負荷電流です。E01E02 の場合、I1‘、およびI2‘ にIc を重ね合わせればよいことが分かります。Ic は両発電機間を環流する電流で、横流と呼ばれます。

初めに、E01=E02、すなわち、誘導起電力の大きさと位相が等しく並行運転している状態から、発電機SG1 の界磁電流が増加して、E01>E02 となった場合を考えます(図4)。

誘導起電力の大きさに差を生じた場合
図4:誘導起電力の大きさに差を生じた場合

E01E02 に比例し、90°位相が遅れた電流Ic が、SG1 からSG2 に向かって流れます。Ic はSG1 にとって90°遅れの流出電流であり、減磁作用によってSG1 の誘導起電力を低下させます。一方、Ic はSG2 にとって、90°遅れの流入電流であるが、90°進みの流出電流としてSG2 に作用し、磁化作用によってSG2 の誘導起電力を上昇させます。

しかし、Ic はいずれの発電機に対してもゼロ力率であり、無効電力を伝達するだけで、各発電機の有効電力には影響しません。このことから、誘導起電力を調整することによって、無効電力の分担を変えられることが分かります。

次に、2 台の発電機SG1、SG2 の誘導起電力が等しく、同位相で並行運転している状態を想定します。両発電機の入力は変化しないのに、何らかの原因により、E01 に対してE02 の位相がδS だけ遅れた場合について検討します(図5)。

誘導起電力に位相差を生じた場合
図5:誘導起電力に位相差を生じた場合

(E01E02) の起電力によって、(E01E02) に対してπ/2 遅れた循環電流Ic が流れます。その大きさを、E01=E02=E0 とすると、以下の式が成り立ちます。

この場合、フェーザ図から分かるように、循環電流Ic は、E01 に対して有効分を持つため、SG1 は1 相あたり、以下に示す余分の電力PC を発生し、負荷を増します。

一方、SG2においては、E02 に対してIc の電流が流入するため、上式と同じ電力が供給されて負荷が減少します。つまり、位相の進んでいるSG1 は負荷が増加して減速し、遅れているSG2 は負荷が減少して加速します。すなわち、E01E02 の位相を一致させ、同期を保とうとします。この場合におけるIc は、同期化電流と呼ばれます。

また、両機を同期状態に保とうとする力は、dPC/dδS に比例します。dPC/dδS は、以下の式で表すことができ、これを同期化力といいます。

これにより、誘導起電力の位相を調整することで、有効電力の分担を変えられることが分かります。

3. 無効電力の分担

4. 有効電力の分担

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 発電機とは
  • 第2回 発電機の誘導起電力
  • 第3回 同期発電機の仕組み
  • 第4回 同期発電機の特性
  • 第5回 無負荷特性曲線と短絡曲線
  • 第6回 同期発電機の並行運転
  • 第7回 誘導発電機とは

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