同期発電機の特性|発電機の基礎知識4

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2024.11.11

基礎知識

同期発電機の特性|発電機の基礎知識4

発電機の基礎知識
 
著者:秋田県立大学 名誉教授 穴澤 義久

前回は、同期発電機の種類と構造、同期発電機に界磁電流を供給・制御する励磁装置の方式を紹介しました。今回は、三相同期発電機の特性として、電機子反作用、同期発電機のフェーザ図、および同期発電機の出力と負荷角を解説します。

第4回「同期発電機の特性」を解説していきます。

 

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1. 電機子反作用

三相同期発電機に平衡三相負荷を接続すると、電機子巻線に平衡三相電流が流れ、回転磁界が発生します。回転磁界は、界磁極と常に一定の関係位置を保ちながら、同期速度で回転します。また、回転磁界の大部分は、界磁起磁力に直接影響を及ぼし、誘導起電力を変化させます。この作用を、電機子反作用といいます(図1)。電機子反作用は、発電機につながれた負荷の力率、すなわち誘導起電力と電機子電流の位相関係によって著しく異なります。

電機子反作用
図1:電機子反作用

・電機子電流が無負荷誘導起電力と同相の場合
電機子導体の無負荷誘導起電力が最大となるのは、磁極の中央が、その導体位置を通過するときです。無負荷誘導起電力と同相の電流が流れる場合、例えばa相の電流が最大となる瞬間には、磁極位置、各相電流の方向、および大きさは、図1 の左図のようになります。

図1の左図では、無負荷誘導起電力と電機子電流の空間ベクトルE0Iを、ある瞬時においてそれぞれが最大となっているコイルの巻線軸方向に右ねじ系にとっています。すなわち、界磁起磁力Ff に対して、E0 は空間的に電気角でπ/2 遅れます。また、三相電機子電流による基本波合成起磁力Fa は、Iと位相が一致します。従って、IE0 と同位相の場合、FaFf と空間的に電気角でπ/2 だけずれるので、主界磁に対して交差磁化作用をします。

・電機子電流が無負荷誘導起電力よりπ/2 遅れている場合
図1 の中図に示すように、Faは、Ffと空間的に電気角でπだけずれるので、Faは主界磁に対して減磁作用をして、合成起磁力Fは、Ffより小さくなります。従って、誘導起電力Eaは、E0 より減少します。

・電機子電流が無負荷誘導起電力よりπ/2 進んでいる場合
図1 の右図に示すように、FaFfと空間的に同位相となり、Faは主界磁に対して磁化作用をして、合成起磁力F は、Ffより大きくなります。従って、誘導起電力Eaは、E0より増大します。

一般に、E0Iの位相が任意の角θの場合、図2 に示すように、FfEaの合成起磁力Fによって作られるエアギャップ磁束Φは、突極性がなければFと同じ位相になります。また、Φによって実際に電機子巻線に誘導される起電力は、Ea のように無負荷誘導起電力E0と、大きさと位相が異なります。

同期発電機の空間ベクトル図
図2:同期発電機の空間ベクトル図

ここで、E0Eaは、それぞれΦfΦによって発生する誘導起電力であり、磁束よりそれぞれ90°位相が遅れています。

従って、⊿Oabと⊿Ocd は相似になり、以下の関係が成り立ちます。

電機子反作用起磁力Fa によって発生する磁束をΦa とすると、Φa が発生する誘導起電力(EaE0) は、電流Iと直交します。すなわち、電機子反作用によって、無負荷誘導起電力E0Ea に降下しますが、その電圧降下を表すフェーザ(E0Ea) は、電流フェーザI より90°位相が進むので、仮想的な誘導性リアクタンスによる電圧降下と表現することができます。

誘導起電力、および電機子電流の空間ベクトルを、ある瞬時においてそれぞれが最大となっているコイルの巻線軸方向に右ねじ系にとり、空間ベクトルの回転方向をフェーザの回転方向と同様に反時計方向にとると、ある瞬時に時間を固定して描いた空間ベクトルは、そのまま空間的に固定した特定のコイルのフェーザに対応します。

2. 同期発電機のフェーザ図

図3 は、電機子巻線の1相について電流Iを基準にとった場合の、電流Iと鎖交する磁束Φ、無負荷誘導起電力E0などのフェーザ図です。

同期発電機のフェーザ図
図3:同期発電機のフェーザ図

図3 において、無負荷誘導起電力から電機子反作用リアクタンスによる電圧降下jxaIを差し引くと、誘導起電力Eaが求められます。さらに、電機子巻線抵抗と電機子漏れリアクタンスによる電圧降下(ra+jxl)I を差し引くと、端子電圧Vが求められます。

負荷電流I が流れているとき、Fa の電機子反作用によって誘導起電力はE0からEaに変化します。これは等価的に、電機子電流によるリアクタンス降下として表すことができます。

ここで、xa [Ω] を、電機子反作用リアクタンスといいます。また、仮想的な電機子反作用リアクタンスと、実在する電機子漏れリアクタンスxl[Ω] をまとめた仮想的なリアクタンスxS=xa+xl [Ω] を、同期リアクタンスといいます。

電機子電流による磁束のうち、界磁磁束に直接影響を及ぼさないで、単に電機子巻線とだけ鎖交する磁束を、電機子漏れ磁束といいます。電機子漏れ磁束には、スロット漏れ磁束、歯頭漏れ磁束、およびコイル端漏れ磁束などがあります。

無負荷誘導起電力E0 は、公称誘導起電力とも呼ばれます。また、負荷時の実際の誘導起電力Eaは、内部起電力とも呼ばれます。無負荷誘導起電力E0 と端子電圧V との位相差δを、負荷角、または内部相差角といいます。

3. 出力と負荷角

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 発電機とは
  • 第2回 発電機の誘導起電力
  • 第3回 同期発電機の仕組み
  • 第4回 同期発電機の特性
  • 第5回 無負荷特性曲線と短絡曲線
  • 第6回 同期発電機の並行運転
  • 第7回 誘導発電機とは

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