同期発電機の仕組み|発電機の基礎知識3
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2024.11.08
基礎知識
同期発電機の仕組み|発電機の基礎知識3

前回は集中巻、分布巻、短節巻の場合の、発電機の誘導起電力を紹介しました。今回は、同期発電機の種類と構造を取り上げます。同期発電機には、水車発電機、タービン発電機、エンジン発電機などの種類があります。また、同期発電機に界磁電流を供給・制御する励磁装置の方式には、直流励磁機方式、交流励磁機方式、静止形励磁方式などがあります。
第3回「同期発電機の仕組み」を解説していきます。
第3回もくじ
1. 同期発電機の種類と構造
同期発電機を駆動する原動機には、水車、蒸気タービン、ディーゼルエンジンなどの種類があります。原動機の回転数は、100 ~ 3,600min-1と幅広く、原動機の種類によってさまざまな構造上の工夫が施されています。
・水車発電機
水車発電機は、水車と直結して駆動する発電機です。水車は、水量と落差によって最適な回転数が存在し、低速の場合100 ~ 150min-1、高速のものでは1,000 ~ 1,200min-1 です。一般的な水車の回転数は、数百min-1 なので、50Hz、または60Hz の電力を発生させるには、多くの極数を必要とします。また、十分な周辺速度を得るには、回転子直径を大きくする必要があります。このように、固定子・回転子の重量が大きい大容量機では、縦軸形が採用されます。縦軸形では、水車が発電機の下部に位置するため、落差を有効に利用できます。また、床面積が少なくて済み、洪水時には、発電機が浸水から逃れられるなどの利点があります。実際、小容量の高速機で横軸形が採用される以外は、ほとんどの水力発電機で縦軸形が採用されています。
図1 に、縦軸形水車発電機の構造を示します。水車は最下部に、励磁機は最上部に直結され、スリップリングを通して界磁に界磁電流を供給します。固定子の上部ブラケットの上にはスラスト軸受けがあり、発電機、および水車の回転部の全重量と、水車ランナーに加わる水圧を支えています。

なお、水車発電機の回転子には、突極形が用いられます。突極形は界磁起磁力を大きくでき、極数を多くすることも容易です。
・タービン発電機
タービン発電機は、蒸気タービン、またはガスタービンで駆動する発電機です。火力発電所の大容量機は通常2 極機です。回転速度は、60Hz 用で3,600min-1、50Hz 用で3,000min-1 です。また、原子力発電用のタービン発電機には4 極機が用いられ、出力138 万kW のものが製作されています。
タービン発電機には、回転界磁形の横軸機が用いられます(図2)。また、回転子の周辺速度が大きくなるので、遠心力の観点から回転子直径が約1,200mm に制限されるため、軸方向に長い構造となり、円筒形が採用されます。突極形は、機械的強度や風損などの理由で採用されません。

回転子は、強度の大きい特殊鋼の鋼塊を鍛造して製造します。回転子表面にスロットを削り、界磁巻線を分布します。また、コイルを抑えるために金属のくさびで留め、コイル端には保護環を設けます。
タービン発電機の構造は軸方向に長く、巻線の絶縁物は本質的に熱の絶縁物に近いため、冷却が重要です。冷却方式は、小容量機、中容量機では空気による強制通風方式が、40MVA 程度以上の大容量機では、冷却媒体に水素を用いる水素冷却方式が採用されます。水素は密度が低く(空気の約7%)、かつ熱伝導率が高いので(空気の約6.7 倍)、空気冷却と比べ、冷却効果が著しく増大します。発電機の容量がさらに増大すると、絶縁物を通さず、水素、油、水などの冷却媒体で導体を直接冷却する直接冷却方式が採用されます。
・エンジン発電機
エンジン発電機は、ディーゼル機関などの内燃機関によって駆動する発電機です。横軸の回転界磁形で、低速度なのが特徴です。設備が簡単で、始動に要する時間が短いため、非常用電源、離島・船舶などの電源として、比較的小容量のものが用いられています。ただし、往復機関の1回転中のトルクが一様ではないので、回転子の回転速度を均等にするため、回転子に適当なはずみ車効果を持たせる必要があります。
2. 励磁方式
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 発電機とは
- 第2回 発電機の誘導起電力
- 第3回 同期発電機の仕組み
- 第4回 同期発電機の特性
- 第5回 無負荷特性曲線と短絡曲線
- 第6回 同期発電機の並行運転
- 第7回 誘導発電機とは