セラミックスの物理的特性評価(機械的特性~密度、強度、硬度~)|セラミックスの基礎知識 9

お役立ち記事

2024.09.20

基礎知識

セラミックスの物理的特性評価(機械的特性~密度、強度、硬度~)|セラミックスの基礎知識 9

セラミックスの基礎知識

著者:東海大学 工学部 材料科学科 教授 松下 純一

前回は、セラミックスの基本的な作製方法を紹介しました。今回から2回にわたり、セラミックスの特性評価について取り上げます。今回は、日本産業規格(JIS)の規定を付記しながら、セラミックス、特にファインセラミックスの特性評価(キャラクタリゼーション、Characterization)について解説します。

 

基礎知識DL

1. セラミックスの特性評価

セラミックスの特性評価(キャラクタリゼーション、Characterization)は、物理的特性評価と化学的特性評価に大別できます(図1)。特性(Property/Properties)の評価(Evaluation)は、キャラクタリゼーション(外来語)と呼称する場合もあります。前者の物理的特性評価には、機械的特性、電磁気的特性、熱的特性、光学的特性などに基づく評価があります。後者の化学的特性評価は、化学反応を伴うセラミック材料の特性で、化学的安定性(反応性)の評価をはじめ、生体用セラミックス(バイオセラミックス)などの生体活性・生体不活性、有害性(毒性)の評価などがあります。なお、通常、化学的特性には、非酸化物セラミックスの耐酸化性、および触媒の性能(特性)なども含めます。

セラミックスの特性評価
図1:セラミックスの特性評価

セラミックスの特性、特にファインセラミックスの特性に関する試験方法、および評価方法は、日本では日本産業規格JIS(旧日本工業規格、Japanese Industrial Standards)により、国際的には国際標準化機構ISO(International Organization for Standardization)により、ある程度、規定されつつあります。近年では、できるだけISO の規格に準拠した方法で特性評価を行うのが望ましいとされています。ただし、得られた試料の試験片サイズが規定よりも小さすぎる場合などは、この限りではありません。

なお、JISは産業標準化法(旧 工業標準化法)に基づき制定された国家標準の規格です。これに対しISOは、非政府組織(世界的な標準化団体)による国際標準の規格です。また、ASTM International(旧 米国試験材料協会ASTM、American Society for Testing and Materials)は、アメリカを中心とした国際的な標準化団体です。

2. セラミックスの密度評価

セラミックスの密度(Density)と一言でいっても、かさ(嵩)密度(Bulk Density)、理論密度(Theoretical Density)、真密度(True Density)、見掛け密度(Appearance Density)、相対密度(Relative Density)など、多くの種類があります。ファインセラミックス粉末の粒子密度測定方法、およびファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法は、それぞれJIS R 1620、および JIS R 1628 に規定されています。また、ファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法は、JIS R 1634で規定されています。

焼結体のかさ密度をアルキメデス法(Archimedes’ Principle)を用いて測定する場合は、液体が被焼結体試料中の開気孔に十分に浸透するような条件を選ぶ必要があります。さらに、測定の誤差を少なくするために、かさ密度測定用の焼結体試料には、なるべく大きなものを用いることや、同一ロットの試料であれば、複数個の測定をすることが望ましいとされています。

試料の相対密度は、得られたかさ密度を理論密度で除し、100を乗じた数値です。単一組成の焼結体や単純複合体の理論密度は、各構成元素、あるいは構成化合物の理論密度から算出することが可能です。しかし、焼結時に固溶体や反応生成物が生じ、焼結体中の構成組成や量が不明の場合は、事前に焼結体を微粉砕し、測定装置を用いて真密度(理論密度)を求める場合もあります。ただし、相対比較をする場合や、固溶体や反応生成物量がごくわずかな場合などは、単純複合体の理論密度を使用して、緻密化の目安として相対密度を算出します。

3. セラミックスの強度評価

4. セラミックスの硬度評価

続きは資料をダウンロードしてご覧ください!

全10回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 セラミックスとは
  • 第2回 化学組成と結晶構造について
  • 第3回 単体セラミックスと化合物セラミックス
  • 第4回 オールドセラミックスとニューセラミックス
  • 第5回 酸化物セラミックス
  • 第6回 非酸化物セラミックス
  • 第7回 セラミックスの作り方(焼結体)
  • 第8回 セラミックスの作り方(単結晶など)
  • 第9回 セラミックスの物理的特性評価(機械的特性~密度、強度、硬度~)
  • 第10回 セラミックスの物理的特性評価と化学的特性評価

 

基礎知識DL

CATEGORY