セラミックスの作り方(焼結体)|セラミックスの基礎知識 7
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2024.09.17
基礎知識
セラミックスの作り方(焼結体)|セラミックスの基礎知識 7
前回は、炭化物、窒化物、ホウ化物など、非酸化物セラミックスを紹介しました。今回と次回は、2 回にわたり、セラミックスの基本的な作製方法を解説します。今回は、焼結体の作製方法を概説します。
第7回もくじ
1. セラミックスの作製方法
所望するセラミックスを作製するために大切なことは、出発原料の最適化です。どんなに高価な製造装置や、評価装置があっても、原料調製がよくなければ、最終的に得られるセラミックスの特性に有意差(バラツキ)が生じ、不良品が発生する確率が上がってしまいます。ただし、高品質な原料を購入すればいいわけではありません。費用対効果を踏まえ、その原料利用に見合う最適な処理装置や、処理条件が重要です。
一般的に、セラミックス(特に緻密質焼結体)を得るための出発原料には粉末を用います(溶液や気体、またはそれらを複合化した出発原料を用いることもあります)。出発粉末の特徴は、セラミックスの特性に大きく影響を及ぼします。図1 に炭化ケイ素SiC の緻密質焼結体を用いた釣竿の道糸通し用ガイドリングの一例を示します。

例えば、数種類の原料粉末(ケイ素を直接窒化して作られた粉末、酸化ケイ素を還元して作られた粉末、イミド分解によって作られた粉末など)から、窒化ケイ素焼結体を製造した場合、これらの粉末の純度や粒径などがほぼ同じでも、また、同一の製造条件下であったとしても、気孔の大きさや分布状態、異常粒成長の有無などに違いが生じるため、最終的に得られる窒化ケイ素Si3N4 の特性は大きく異なります。
もちろん、添加する焼結助剤(所望の組成となるように加える添加物)の最適化も重要です。出発原料を粉砕して微粉化して用いる場合は、粉砕方法と分級方法に影響されます。分級とは、ふるいや装置にかけて粒径をそろえることです。また、2 種以上の原料粉末を均一混合する場合、それぞれの配合比がほぼ同程度の場合と、極端に偏った場合では、最適な混合の方法と条件が異なります。さらに、混合する量が少量か多量か、また、回分(バッチ:Batch)式か連続式かによっても、混合方法と条件が異なります。
そのため、出発原料に応じて、最も適切な混合方法や粉砕方法と、その処理条件を選定する必要があります。特に、非酸化物や金属系の微粉(微粉末)を取り扱う場合は、吸着酸素と表面酸化に注意が必要です。微粉化するほど、その影響は著しくなる傾向があります。なお、成形条件を考慮した最適な分散剤や有機バインダーの添加濃度や添加量などにも注意を払う必要がある場合があります。
2. 焼結体の作製方法
全10回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 セラミックスとは
- 第2回 化学組成と結晶構造について
- 第3回 単体セラミックスと化合物セラミックス
- 第4回 オールドセラミックスとニューセラミックス
- 第5回 酸化物セラミックス
- 第6回 非酸化物セラミックス
- 第7回 セラミックスの作り方(焼結体)
- 第8回 セラミックスの作り方(単結晶など)
- 第9回 セラミックスの物理的特性評価(機械的特性~密度、強度、硬度~)
- 第10回 セラミックスの物理的特性評価と化学的特性評価