タイの新経済政策、タイランド4.0とは?|イプロスブログ

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2017.07.27

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タイの新経済政策、タイランド4.0とは?

タイランド4.0(Thailand4.0)という言葉を、聞いたことがありますか? 東南アジア製造業の中核を担い、日系企業の進出も多いタイ。簡単に、分かりやすく、タイの新経済政策を説明します。

タイランド4.0に触れる前に、タイの工業化の歴史を3フェーズに分けて見ていきます。最初は、農耕社会と家内工業を中心とした時代(タイランド1.0)。次は、工業化がはじまり、軽工業・輸入代替・天然資源や安い労働力を生かした時代(タイランド2.0)。その後、グローバル化が進み、重工業・輸出促進・海外からの直接投資の時代(タイランド3.0)と発展してきました。

タイランド4.0と工業化の歴史タイランド4.0と工業化の歴史(引用:在ワシントンDCタイ大使館ウェブサイト

時代を経るに従い国の富は増えてきたものの、タイランド3.0では組織的な課題も浮き彫りになりました。環境負荷の不均衡、所得格差、中所得国(中進国)のわなです。中所得国のわなとは、多くの途上国が経済発展により1人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することです。日本、韓国、シンガポールなどは、このわなを乗り越えて高所得国となった例に挙げられます。

世界銀行のデータによると、タイの2016年度の1人あたりの実質GNI(国民総生産)は5,593米ドルで、成長率は3.07%。日本(2015年)は、それぞれ48,858米ドルと1.55%。工業化がある程度進んだ上位中所得国で、1人あたりのGNIは3,956~12,235米ドルです。タイの1人あたりのGNIの世界ランキングは111位であり、高所得国の仲間入りをするには、さらなる飛躍が必要といえます。

  • タイランド4.0のコンセプトと戦略

このような危機感のもと、2016年にタイランド4.0という名の新経済政策が発表されました。簡潔にまとめると、今後20年をかけて価値を作り出す経済への転換を目指す政策です。具体的には、伝統的な農業をスマート農業へ、伝統的な中小企業からスマートなベンチャー企業へ、技術を買うから作り出す、昔ながらのサービスから高価値のサービスへ、非熟練作業者から知識労働者・熟練作業者への転換です。

タイへ進出したり、進出を予定したりしている日系企業の関心は、タイランド4.0で産業がどのように変わるかということでしょう。タイランド4.0で注力するのは、10の産業です。最初に力を入れるのは、現在も他国に比べて有利な5つの産業、具体的には次世代自動車、スマートエレクトロニクス、医療ツーリズム、農業とバイオテクノロジー、食品分野です。さらなる飛躍のために、追加で5つの産業、ロボティクス、航空・ロジスティクス、バイオ燃料やバイオ化学、デジタル技術、医療ハブの分野に焦点を当てます。似たネーミングのインダストリー4.0の技術も、取り入れていく絵が描かれています。

タイランド4.0の概要タイランド4.0の概要(引用:在ワシントンDCタイ大使館ウェブサイト

  • 具体的な動き

前の章で述べた注力産業の一つ、自動車分野については、既に優遇政策が実施されています。BEV(バッテリー式電気自動車)、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)は、消費税を2%へ減税されます。輸入税も、初期の2年間EV(電気自動車)は免除されます。また、充電ステーションへの投資へ財政的な支援も政策に入れられています。

また、タイランド4.0を推進するための場所として、EEC(Eastern Economic Corridor)の開発も進められています。首都バンコクの東で、バンコクから数時間で到着できるエリアです。現在、陸海空の地の利を生かして、インフラの整備が進んでいます。EECのフラグシッププロジェクトは、デジタルパーク・タイランドという名称で、ここにタイランド4.0で、力を入れる10の産業、自動車、エレクトロニクス、医療、バイオ、ロボティクス、航空・ロジスティクス分野の技術やイノベーションの中心地とする構想です。

デジタルパーク・タイランドの場所デジタルパーク・タイランドの場所(引用:デジタルパーク・タイランドウェブサイト

このように、タイの新経済政策タイランド4.0は、次の20年さらにはその先のタイを見据えて、プロジェクトが進められています。著者も日本で、タイ工業省や科学技術省の役人のプレゼンテーションを聴講しました。国内外への情報発信も、積極的に実施されているようです。

これまで、多くの日系企業で、タイはアジアの生産拠点という位置付けだったのではないでしょうか。タイランド4.0という新しい動き。特に、10つの注力産業、次世代自動車、スマートエレクトロニクス、医療ツーリズム、農業とバイオテクノロジー、食品分野、ロボティクス、航空・ロジスティクス、バイオ燃料やバイオ化学、デジタル技術、医療ハブの技術や製品を持つ日本企業には、新しいチャンスがあるかもしれません。定期的にタイランド4.0の情報をチェックしてみてください。

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